風雲電影院

江戸川乱歩猟奇舘 屋根裏の散歩者

2014年8月22日
新文芸坐

 1976年作品。新文芸坐、石橋蓮司特集の一環で、『非行少女ヨーコ』との二本立てで観る。

 江戸川乱歩は、小学校のころから、少年探偵団ものなどで慣れ親しんでいたから、あまりイケナイものを読んでいるという意識がなかった。高校に入ったばかりのころだったろうか? 江戸川乱歩全集が出版され、全冊買って読んでいた。夢中で読んでいて、学校にまで持って行って読んでいたら、担任が「何を読んでいるんだ?」というので、本を見せると没収されてしまった。放課後に取りに行くと、「こんなものを学校に持って来て読んではいかん」と怒られた。どうやら、戦中派の先生にとって、江戸川乱歩は、エログロ以外の何者でもないと思えたらしい。あとからこの担任とは仲良くなって、いろいろ話すようになったのだが、戦後はかなりの反骨精神の持ち主だったが、戦争中は正反対の軍国少年だったらしいこともわかってきた。

 『江戸川乱歩猟奇舘 屋根裏の散歩者』は日活映画。それも日活ロマンポルノの一本。監督は、かの田中登。主演が宮下順子。『屋根裏の散歩者』は江戸川乱歩の代表作のひとつだが、エロくは無い。むしろ密室トリックの完全犯罪もの。天井裏から糸をたらし、寝ている人の口に毒を入れて殺すといったアイデア。今では古いトリックだし、現実に上手くいく確率は少ない様に思えるのだが、推理小説を読みふけっていた当時は面白く読んだ。

 しかし、これではポルノ映画になるわけがない。江戸川乱歩の作品の中から、もう一篇、『人間椅子』を加え、さらに脚本を膨らませて一本の映画にしている。

 セックスシーンもたくさん入る。そりゃロマンポルノだもん。そうでなけりゃ観に来たお客さんが納得するわけない。そんなわけで、江戸川乱歩でまさかのポルノ映画になってしまった。

 監督が田中登だから、撮り方も上手いんだけど、ラストは「えーっ!」ということが起きて終わりになる。そんなあ〜。まあ、歴史的事件は確かにあったんだけど、そこに繋げるのかぁ〜。そして伏線として出ていた井戸の水をくむ女が、ここにきて突然ハマる。意味は何かといえば、あまり意味は無いように思えるショットなのだが。その辺が田中登なんだね。

 私が乱歩全集を、この映画が公開されたころに読んでいたら、先生にまったく言い訳できなかったかもしれない。

8月23日記

静かなお喋り 8月22日

静かなお喋り

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