風雲電影院

『ヤング≒アダルト』(Yang Adult)

2012年3月14日 日比谷シャンテにて

 こういう映画、若いときに観たら、また全然違う感想を持ったに違いない。シャーリーズ・セロンの演じたメイビスというキャラクターに、単に「迷惑な奴」という印象しか持てなかっただろう。

 シャーリーズ・セロンの出ていた映画って今までほとんど観ていなくて、よく知らなかったのだが、今回「かわいい女だなあ」と思ってしまった。いやね、美人だとか、そういう話ではなくて、メイベルって役になってるシャーリーズ・セロンなのだが、メイベルみたいなアラフォー崖っぷち女って、かわいいよなあと思ってしまう。

 メイベルは美人で才能もあると自分では信じている女。学生時代はキャンパスでチヤホヤされて、みんなの憧れの的。小さな田舎町で一生を送るなんて嫌だと思い都会に出て来る。しかし、結婚もするが早々と離婚。仕事もライトノベルの作家で、しかもゴーストライターという立場。大酒のみのアルコール依存症で、二日酔いの朝はコーラをがぶ飲み。37歳にもなってキティちゃんTシャツを平気で着ている。きっと「こんなはずじゃなかった」と思っているんじゃないだろうか?

 そんな折、故郷からメールが。元カレが結婚して子供が生まれ、パーティをやるから来ないかという内容。これに勘違いしてしまう。元カレが結婚した相手ときたら、昔まったくイケてなかった女。実際にひさびさに会ってみたら、趣味で素人バンドでドラムを叩いている。そのドラムの酷い事といったら! 演技もあるのだろうが、このドラムの下手さ加減の演出は見事! 
 「なんだ、いまだにイケてないじゃないの」 メイベルは、元カレがこの女房に愛想を尽かしていて、自分とヨリを戻したいと思っているんだと勘違いしてしまう。

 人生ってわからないよなあと思う。エリート・コースを歩んでいくんだろうなあと思っていた奴がドロップ・アウトしてしまっていたり、みんなの憧れだった女性がいまだに未婚だったり。そして、あんなに生命力に溢れていた奴が早くして命を落としていたり・・・。この歳まで生きてくると、いったい何が幸せなのか、よく解らなくなってくる。

 ちょっと前に、勝ち組、負け組なんて言葉が流行った。女性の場合、結婚して子供を産んだ方が勝ち組。アラサーになっても結婚できないのが負け組。でもねえ、どうもこの言葉、好きになれない。まあ、暫定的に使うのだろうけど、こんなことで勝ちとか負けとか決められないよなあ。

 メイベルは勝負下着まで着用して元カレに迫るのだが・・・。

 それでもメイベルは落ち込まない。いや、落ち込んで、また酒飲むのだろうけど、立ち直る。そんなメイベルがかわいいなと思ってしまった。

3月15日記

静かなお喋り 3月14日

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