風雲電影院

誘拐の掟（A Walk Among the Tombstones） ２０１５年６月４日 ユナイテッドシネマ豊洲 　ローレンス・ブロックのマット・スカダーものの一冊『獣たちの墓』の映画化。スカダー・シリーズは、飛び飛びで何冊か読んでいるが、これは未読だった。 　マット・スカダー役には、なんとレーアム・ニーソン。「ええっ！　そのキャスティングは無いっしょ」と思って観に行ったら、けっこういけるじゃん。マット・スカダーは以前、ジエフ・ブリッジスもやっていたけれど（800万の死にざま）、リーアム・ニーソン、いいよ。元から、なんとなく陰のある男の役が多かったから、こういう役は案外合うんだな。 　冒頭のスカダーがアル中だったころの描写がいい。昼間っから薄暗いダイナーみたいなところで新聞を読みながらテーブルに置かれたショットグラスのウイスキーを二杯飲むところ。思わず「加藤泰か！」とツッコミを入れたくなるローアングル。画面の奥に強盗が入ってきて発砲。気が付いて発砲して追いかけていくとこもローアングル。いやいや、カッコイイではないの！ 　このアル中をカッコイイと言ってはいかんのだけど、マット・スカダーはこのときの事件がキッカケで禁酒するのであります。そして刑事だった彼は警察を辞め、無免許の探偵家業。こんな設定で何が出来るかというと、そこがローレンス・フロックの上手いところなんですなぁ。 　麻薬ディーラーの妻が誘拐されて、身代金を要求される。当然闇家業の人間では警察に届けることもできない。そこでスカダーに依頼が舞い込むわけだが・・・。何しろ相手も、警察には知らせないだろうと踏むと、最初っから人質を返す気などない。どうも猟奇的な傾向のある犯人で、妻は惨殺され、バラバラ死体で見つかる。 　その後、さらに同じような誘拐事件が起こる。今度は14歳の少女。この少女が真っ赤なダッフルコートを着て犬を散歩させているシーンの鮮やかなことと言ったら！　このカワイイ少女が猟奇的な誘拐犯の手に落ちるというサスペンスには、思わず身体が硬直してしまった。 　生半可な手では通用しない犯人とどうやって対決するのか、それがこの話の見どころ。さすがローレンス・ブロックという展開が待っている。 　ハードボイルドなのに禁酒探偵。そこがまたいい。マット・スカダー、未読も含めて読み直してみようか？　もちろん、しらふでね。 ６月５日記 静かなお喋り ６月４日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る

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