風雲電影院

ゼロ・ダーク・サーティ(Zero Dark Thirty)

2014年4月1日
早稲田松竹

 ビン・ラディン殺害作戦を描いたアメリカ映画。

 157分もあると知って、観る前からびびってしまった。映画が始まっても、拷問シーンから始まって、なかなかビン・ラディンの行方がわからなくて紆余曲折していく過程が延々と続くので、しまいに飽きてきてしまい、早く終んないかなぁと思ってしまった。DVDで観てたら、おそらく途中下車しちゃったんじゃないかと思う。

 ところが、ついにビン・ラディンの屋敷に突入というところに来て、突然面白くなった。いやはや、凄い臨場感。ここだけ観ても十分にお金を払った価値はあると思う。日本人なら誰でもそう思うだろうけど、これって『忠臣蔵』の吉良邸討ち入りだよね。『忠臣蔵』もこんな形で映画化したら、すごーく面白いものができそうな気がする。でも、こんなひっそりと屋敷に侵入するなんていう手は日本人の意識には合わないか。
 実際どうだったかは知らないが、これってかなりリアルな映像。戦争映画マニアならゾクゾクするでしょ。

 それで、これも誰でも思うことだろうけれど、この映画がアメリカで高い評価を受けてアカデミー賞にノミネートなんてことになったのってのは、「ちょっと待て」ということになる。だってこれって、9.11へのアメリカの報復、アメリカは正義、アメリカは偉いってことに繋がって行ってしまうのが明らかな映画なんだから。
 9.11はアメリカだけじゃなく、ほかの国の人にとっても許せない事件だったとはいえ、「これがアメリカのオトシマエだ」とばかり、9.11の首謀者ビン・ラディンを付け狙って、捕獲しようとして、結局は殺害してしまったわけで、これって、なんだかなぁ。
 「やられたらやり返す。十倍返しだ!」っていうのは『半沢直樹』の世界だから許されるのであって、仇討ちが続いて行ったら戦争は無くならないでしょ。『忠臣蔵』が成立しているのは、討ち入りした浪士たちも、全員切腹したから、それで済んでいるわけなんだから。そこが日本らしい決着のつけ方なんだよね。
 いくらオトシマエと言っても、相手を殺しても正義、自分は正しくて、これは罪にならないなんてことじゃないんだ。
 だから、『忠臣蔵』を基にしたと言われるヤクザ映画だって、主人公は重傷を負うか、刑に服すのを暗示して終わる。

 序盤のCIAによる拷問シーンだって、そんなにキツイ拷問は描いていない。実際はどうだったか知らないが、あんな生易しいものじゃなかったでしょ。もちろんCIAが全面協力しているそうだから、あまりエグいシーンは撮れなかったのだろうけど。アメリカはどういうことがあっても紳士的ですよとアッピールしているようにしか見えない。

 主人公が女性分析官というのも、なんだかなぁ。ほんとにそうだったの? これもソフトに描こうという手じゃないのかな。ジェシカ・チャステイン、美人だし。最後に涙まで見せちゃって、これもなんだか言い訳のように感じてしまって・・・。

 アメリカ人は国を挙げて大喜び、それ以外の国の人は、う〜ん、面白いけど、なんだかなぁっていう映画でしょうね、これは。

4月2日記

静かなお喋り 4月1日

静かなお喋り

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