March.15,2000 FrontPage Express

March.15,2000 栗三福

        下田の駅前で買った栗まんじゅう。おいしかった。おしまい。

「こらあ、このカバ。てめえは何やってやがるんだ!」
「あっ、源ちゃん。どうしたい」
「どうしたいじゃねえや。いったいテメー、最近のテメーのホーム・ページは何だ! 今月になってから一日置きに下田で食べてきた物の写真載せておしまいじゃねえか。何、手え抜いてるんだよ」
「だって楽なんだもの。今週もね、週末に箱根行くの。それでまた旅館の写真撮って、出された食事の写真撮って、帰りには、しこたま土産買って全部写真撮って、また載せるつもりなんだ。もう、この先1ヶ月はずーっと毎日これだけ。いいこと考えたでしょ」
「そりゃあ、お前の勝手だけどよ、あまりに露骨な手抜きじゃねえかい?」
「まあ、それは置いておいて、ちょっとこっちへおいでよ。ほら見ねえ、最新型のテレビだ」
「おっ、これはバイオPCV−MX1TV7。テレビじゃなくてパソコンだろ、これ。テレビ内蔵型のパソコン」
「うん、まあな。そうとも言う。それでね、これテレビだけじゃないんだ。CDだって聴ける」
「そりゃあ、パソコンなんだもの、今のはそのくらいできる」
「そんなんで驚くなよ。テレビのくせにMDだって聴けるんだ。CDからMDへの録音ワンタッチ。MD編集も楽々という優れものだ」
「ほう」
「ふふふふふ、しかもテレビのくせにゲームもできる。ほら、これが一緒についてきた『ニード・フォー・スピードV』というレーシング・ゲームだ」
「すっ、すっげ゛ー。すごいリアル。こ、これは興奮するなあ! いつもこれで遊んでいるのか?」
「ああ、一日一時間はこれにハマッてるんだ」
「いいなあ」
「ふふふふふ、いいだろう。しかもテレビのくせに、DVDも見られる。ほら、源ちゃんの好きな『ブレード・ランナー』だ。きれいだろう?」
「でもよ、ゲームができてDVDが見られるって、プレイ・ステーション2だって出来るんじゃないの?」
「―――――――――あ、あのさ、その話はなしにしようや。嫌なこと思い出しちゃう」
「何かあったのか?」
「ああ、ちょっと前の回でな―――――。そんなことは、どうでもいいんだ。ほら、テレビのくせにFMだって聴ける」
「あのな、いちいち『テレビのくせに』って言うな。パソコンだろ、それ。FMが聴けるパソコンなんて何の意味があるんだよ。FMの聴けるラジオなんて、今や千円以下でいくらでも売ってるぞ」
「―――――――。それはそうだけどさ。でもテレビが見られるのは、そうそう無いだろう」
「テレビなんてなあ、今時安く売ってらあ。パソコンはパソコン、テレビはテレビで別に買って見ればいいじゃねえか」
「――――――。あ、あのさ、これ凄いことにね、ディスプレィの一部にテレビを小さく出しながら、パソコンもできちゃうんだ」
「ほう、それでテメーは、その小さなテレビみながら、何をするんだ?!」
「―――――――――。あのさ、大相撲春場所面白いよね。若乃花の引退がかかっちゃってるしね」
「だから、その相撲中継を見ながら何をするかって言ってるんだよ!」
「――――――――――。あのさ、木曜深夜の東京12チャンネル『エクセル・サーガ』って見てる? 最終回目前にして、もう何していいのかわかんなくなっちゃってて、このところ、パロディばかりのドタバタになっちゃってるの。明日16日のは、予告見ると、『北斗の拳』のキャラクターが出てくるんだぜ。是非見て」
「何そこで、情報入れてるんだよ! そうじゃなくて、テレビを見ながら何やってるんだって聞いてんの!」
「――――――――」
「ホームページは、そのバイオで作ってるんじゃねえのか?」
「ああ、ホームページね。ホームページは、そこの電話の脇に転がしてある、富士通のポンコツ・ノートで打ってるの。チョコレートやガムがくっついてて、ベトベトで触るのも嫌なんだけどね」
「こ、このお、テメーって野郎は! 何だってバイオでホームページを作らないんだよ!」
「だってさ、このテレビ――――じゃなくてパソコン、[FrontPage Express]が入ってないんだもの」
「て、テメーはまだ、あのろくでもないソフトに頼りきっているのか! まだHTMLで作ろうという甲斐性はねえのかよ!」
「だってカバなんだもの。HTMLなんてわかんないよお」
「しょーもない野郎だなあ、テメーは! ははあ、こりゃあWindows98のセカンド・エディションだな。これには[FrontPage Express]は入ってねえや」
「そうか、それじゃ今までどおりホームページはノートで打つことにしよう。汚らしいから、毎日10分ほどでチョコチョコっと打っておしまい」
「こ、この大カバ野郎が! HTMLが使えないなら仕方ねえ。いいか、マイクロ・ソフト社のWebサイトにアクセスして[FrontPage Express]のプログラムをダウンロードしろ! 無料なんだから、絶対にやれよ!」
「源ちゃん、そのプログラム、今すぐダウンロードしなくちゃいけないかなあ」
「思い立ったら吉日。今すぐにやりな!」
「今すぐは勘弁しておくれよ。これから見たいテレビのプログラム(番組)があるんだ」


March.4,2000 バイオPCV−MX1TV7

「あっ、プレイステーション2を買いにいらしたんでしょう? 初日分はもう売りきれなんでございますよ。今度はいつ入荷するか解らないんで、また改めてご来店のほどを」
「おい店員、俺は別にプレステ2を買いに来たんじゃねえんだ。テレビを買いにきてやったんぞ。さっさとよこせ!」
「乱暴な人が来たね。へいへい、もう朝からプレステ2,プレステ2のお客様ばかりでして。それで、どのようなテレビを差し上げましょうか?」
「ソニーから出た、最新型のやつだ」
「やっぱり、プレイステーション2」
「違うって、テレビだって言ってるだろうが」
「はて、ソニーの新製品ですか? そんなのあったっけかなあ。大きさは何インチのでしょうか?」
「確かあれは、17インチ」
「ずいぶんと中途半端なサイズですね。そんなのあったっけ」
「隠してんだろう、お前。プレステ2と同じで、店の関係者に分けちゃって、それで善良なる我々一般市民には回さないって寸法だろう。世論に訴えてやる」
「そんなことしてませんて。」
「そういえば、ゲームも出来るって話だったな」
「やっぱりプレステ2だ。はて、テレビと一体型のプレステ2なんてあったかな」
「だから、プレステ2じゃないって言ってだろうが。CDも聴けるそうなんだが」
「やっぱりプレステ2」
「違うって。なんとDVDだって見られちゃうんだそうな」
「お客さん、冗談はよしましょうよ。やっぱりプレステ2じゃないですか」
「こ、このう、このくそばか店員が、プレステ2じゃないと何回も言ってるだろうが!」
「く、苦しい。首を絞めるのはやめてくださいよ。ふう、死ぬかと思った。型番なんて解りませんかねえ」
「ええっと、確かメモしてきたはずだ。あっ、これだこれだ。うーんと、バイオPCV−MX1TV7。俺に英語読ませるなのよな」
「バイオ? バイオってソニーがパソコンに付けている名前じゃないですか?」
「ああ、そういえばパソコンも付いているって話だったな」
「ここは、テレビとかビデオを売っている売り場なんですからね。パソコン売り場に行ってくださいよ」
「何! パソコンつきのテレビはここで売っているんじゃないのかい?」
「パソコンつきのテレビじゃなくて、テレビつきのパソコンですよ。それは」
「同じじゃねえか。ここでも売れよ」
「同じじゃないですよ。さあ、パソコン売り場は3階ですからね、そっちの方にいらしてくださいね」
「けちっ、ここでも売れ! バカ! ―――――ええっと、3階3階っと。おお、ここだここだ。おーい店員、テレビ売ってくれ」
「あのう、テレビでしたら、5階のテレビとビデオの売り場へ」
「じゃかしゃい。今、行って来たばかりだ。そしたら、こっちへ行けと回されたんだい。お役所仕事みたいなことしやがると、承知しないぞ!」
「だって、テレビは・・・」
「パソコンつきのテレビって言ったけな」
「えっ、テレビつきのパソコンじゃないんですか?」
「そうとも言うかな」
「それじゃあ、これでしょ、ソニーが新しく出したバイオPCV−MX1TV7」

「そうよ、これだこれだ」
「お客さん、いいものに目につけられましたね。これなら、もう机の上はトータル・エンターテイメント・スペースに早変わり。テレビをディスプレイに普通に映すだけでなく、ほら、テレビ画面を小さくして、ディスプレイの一部に配置すれば、パソコンで他のことをやりながらでも、テレビが見られる」
「これで、プロ野球中継見ながらでも、ホームページ作れる」
「それだけじゃありません。DVDだって見られる」
「『太陽にほえろ』が見られるかも」
「MDの録音再生だってお手のもの」
「『SMAP×SMAP』も見られる」
「文字放送つきでFMも聴ける」
「『水戸黄門』だって『大岡越前』だって見られる」
「映像を取り込んで、その編集だって出来る」
「日曜日は『笑点』『ちびまる子ちゃん』『サザエさん』『こち亀』・・・」
「テレビの話じゃなくて、よく聴いてくださいよ」
「もちろん、聴いてるって」
「お手持ちのCDだって、ほらこういうふうに、パッケージ登録して、タイトルや曲名やアーティスト名を入力していけば、データベース化できるんですよ」
「へええ、いったい何曲くらいタイトルを入れられるんだい?」
「そりゃあ、もう無限ですよ」
「千曲くらい大丈夫かなあ」
「ですから、千曲どころじゃないですったら。いくらでも入力できますって」
「なあるほど、テレビだけに選局(千曲)はお手のもの」

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