May.20,2000 アクセス・カウンター

「大家さん、大家さーん! おりますかーい!」
「はいはい、今行きますよ。どなたかな? ―――――おお、カバ公じゃねえか、どうしたい」
「あっ、こりゃ大家さん。すいませんねえ、店賃溜めちゃってて。『アドビ・Photoshop』なんていうばか高けえ買い物しちゃったもんだから、一銭もオアシがなくなっちまってたんでさあ。ありゃ、アドビじゃなくてアコギって名前に変えた方がいい。とりあえず、去年までの分、ちょっとした実入りがありやしたんで、お支払いにまいりました。今年からの分は夏までには何とか入れますから、勘弁してくだせえ」
「それは感心だな。後のはまあ期待しないで待ってるよ。ところで最近気がついたんだが、おめえのホームページ、アクセス・カウンター付けたんだな」
「へえ、4月の始めから付けてみたんですがね」
「何だって今ごろになって付けたんだい? 最初にアップ・ロードした時に付けとけば良かったじゃねえか」
「最初に付けてみたことは付けてみたんですよ。プロバイダーのサービスにあるカウンターなんですがね、それがねえ、あっしの苦手なHTMLで自分で書きこまなくちゃなんねえ。一応、書きこんでアップ・ロードしたんですよ。そしたら、[000001]って数字が出ましてね、これでいいやってんで、試しにもう一度アクセスしてみたら、アクセス・カウンターのところだけが、ポッカリと穴が開いちゃってたんでさあ。それでヤケんなっちまって、アクセス・カウンターなんていらねえやって、はずしちゃったんですよ」
「乱暴な奴だなあ。そういう時は、あたしに一度相談してくれりゃあいいものを」
「大家といえば親も同然っていいたいんでしょ。そうすっとアッシが、そんなヘンチクリンな顔の親を持った憶えがない―――っと、いつもの展開ですな」
「あたしだって、おめえみてえな、子供を持った憶えはねえや。仕方なく面倒みてやってるんじゃねえか。調子に乗っていると、一発殴るぞ、このカバ!」
「すいません、ついつい口癖になってしまってまして」
「まったく冗談じゃねえや。甘い顔すると、すぐつけあがる」
「ところでね大家さん、アッシのカウンター1日平均で15アクセスなんですよ。アッシが朝一回、何か書き込みがないかチェックの意味で一回見て、その日の分を打ってアップロードして、うまく乗っているかチエックいれるから、アッシが2回」
「うん、私も1日1回見ているよ」
「これでアッシと大家さんで計3回っと。それ以外にアッシの知り合いがふたり見てくれているから計5回。それに、町内のタケさん、アキさん、ヒデさん、ユキさん、セイさんの5人が見てくれているから、これで10回。とするとですよ、あとの5回は誰なんでしょうねえ?」
「ああ、町内の5人は1日2回見るってよ。3回見てる時もあるって言ってたよ」
「くっそー、そうだったのか! あいつらしか見てなかったのか!」
「おいおい、検索登録はしているのかい?」
「いえ、別にそういうことはしてねえんですがね」
「やらなくちゃ、見に来てくれる人は増えやしねえよ」
「検索ねえ。どうやたっらいいんですかい?」
「そういうことは、私に聞きなさい。大家と言えば親も」
「そんな、ヘンチクリンな顔の親を持った憶えは、痛えーっ、大家さん、突然殴らないでくださいよ」
「昔やっていたボクシングの腕は、まだ鈍っちゃいなかったな」
「なあるほど、大家さんのところを訪ねたアッシがカウンター・パンチをもらう。これがほんとの、アクセス・カウンター」

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