February.11,2002 起動不良

「せんせーい! 先生いますかー!?」
「はいはい、今行きますよ。どなたかな? ・・・ああ、こりゃカバ公じゃないか、どうしたい」
「先生にぜひ診てもらいたいと思って来たんですよ」
「ほう、去年は緑内障に高血圧に膀胱炎。忙しい年だったなあ。なんだ、今度は食いすぎで腹でも壊したか?」
「いえ、あっしはもうきわめて元気なんですがね、パソコンの具合が悪くて先生に診てもらおうと思って来たんですよ」
「ああ、ああ、そんな重たいパソコンを持ってきちゃって・・・。だいたい、なんでそんなものを私のところに持ってくるんだ。私は医者だよ。パソコンは直せないよ」
「いえね、あっしのパソコンがウイルスに感染しちまいましてね、動かなくなっちまったんですよ。ウイルスといえば病気でしょうが。それを治せるのは、お医者さんしかいないと思いましてね」
「困った人だね。私は人間の病気は治せても、機械の病気など直せないよ」
「そんなこと言わずに診てくださいな。困っちゃってるんですから」
「困るのはこっちだよ。パソコンの修理なんて出来ないと言っているのに・・・。しょうがないやつだなあ。うーん、まあどんな症状なのか話してごらん」
「電源を入れますとね、パソコンが立ち上げようとしているんですが、途中でエラー・メッセージが出ちゃうんですよ」
「ほう、どんなメッセージだい?」
「ええっとね、[例外0Eが VXD MCSCAN32(01)+000188CFの0028:C93F18DFで発生しました]とかいうの。これもう、人類が理解できる範囲を越えてません?」
「ふーん、それで?」
「そのまま動かなくなっちゃっておしまい」
「強制終了させるしかないのか?」
「そうなんですよ。壁のコンセントから電源コードを引き抜くしかないの」
「おいおい、パソコンをそんな乱暴に扱っちゃいけないな。[Ctrl] [Alt] [Delete]の三つのキーを同時に押すんだ。そんなムチャするとハードディスクがいかれちまうぞ」
「ええっ! それで私のパソコンは壊れちゃったんですかねえ」
「まあ、ちょっと待ちなさい。私のパソコンでとりあえずメーカーのホームページにアクセスしてみよう。何かヒントが出ているかもしれない。よし、それではちょいちょいちょい―――っと」
「さすが先生、慣れたものですね」
「そうでもないがな。私がパソコンを使うのはもっぱらカルテ作りと処方箋の発行、それに治療費の計算くらいだ。インターネットはほとんどやっておらん」
「そんなこと言っちゃってえ、本当はアダルト・サイトでも覗いてるんでしょ。医者になったのだって子供のときのお医者さんごっこが忘れられなかったからでしょ、このドスケベ!」
「何を言うんだ! うん? ほらほらここに出ているぞ」
「うーん、なんか出ていますねえ。でも何のことか、あっしにはさっぱりわからない」
「要するに、ウイルスに感染したことで原因で、今までのウイルス対策ソフトが起動障害を起こしてしまったということだな」
「なっ、何のことですか? 私にはさっぱり・・・」
「ここを読むと、パソコンをまずSafeモードで立ち上げろとあるな」
「Safe? パソコンは今Outですよ」
「どうも、お前は頭が混乱してきているようだな。いいか、電源を入れたらまず[Ctrl]キーを押すんだ。やってみなさい」
「ええっと、こうですかい?」
「そうだ、Startup Menuがでてきたろ。それで3番のSafe modeを押すんだ」
「ええっと3を押すっと・・・」
「よし、次に[半角/全角]キーを押す」
「ああ、左上のやつですね。これを押す・・・っと」
「よし、それでパソコンはSafeモードになった。次にウイルス対策ソフトの常駐を解除すればいいんだ。ほら、ここに出ている
「うへー、何のことだかさっぱり」
「困った人だね。要するに、[スタート]から[ファイル名を指定して実行]。そしてここに出ている6つのチェックボックスをオフにすればいいというわけだ。ほらやってごらん」
「ええっと、これとこれとこれと・・・・・・をチェックを外して―――っと」
「そうだ。それで[適用]をクリックして、再起動させればOKだ」
「うーんと、こうやってと。あっ、先生動き出しましたよ」
「よしよし、それでよかったみたいだな」
「うわあ、立ちあがったぞー。ふう」
「よかったな。それじゃあ家に帰りなさい」
「ええ・・・」
「どうした。早く帰らないか。こっちも患者さんが待っているんだからな」
「いやね、パソコンは立ちあがるようになったんですが、こっちはヘトヘトに疲れてしまって立ちあがれなくなってしまいました」


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