September.27,2002 かけそばうどん

        かけそばとか、かけうどんというのは、もりそばやもりうどんに較べて、あまり出ない商品だ。ところが、これが美味しいものだということは、なかなか知られていないらしい。かけを食べるのは貧乏くさいと思われがちなのかも知れない。蕎麦汁のダシが旨い店のかけは本当に旨い。かけ以外の暖かいそばを[種もの]と我々は呼んでいるが、玉子や天ぷらを乗せると、蕎麦汁の味まで変わってしまう。蕎麦汁に自信を持っている店は、かけを食べてくださるお客さんを通だなと思う。かけは、麺と汁だけが勝負の商品だ。ダシ汁の鰹節の香りをこころゆくまで味わうには、かけは最適なのだ。

        先週の『週間朝日』のコラム『あれも食べたいこれも食べたい』で東海林さだおは、蕎麦屋へ行き、かけそばとかけうどんを同時に注文し、それを一緒にして食べるということをやっている。かけそばとかけうどんを並べて、最初は替わりばんこに食べていく。かけそばをオカズにして主食はかけうどんという感じになるらしい。両方が減ってきたところで、かけそばとかけうどんを一緒の丼に移してしまう。かけそばうどんの完成だ。

        やっぱり人の思うことは同じようだ。もりだと、変り蕎麦といって、いろいろなものを練り込んだそばやうどんを何種類か並べて食べさせるという商品を置いているところがある。だか、かけではそういうことをやらない。ひとつの丼に、そばとうどんを入れてしまったらどうだろうという発想は誰でも考えるらしい。そりゃあ、こっちは商売でやっているわけだから、かけそばうどんを食べたことがないわけがない。間違って多めに蕎麦をあげてしまった。よし、これを昼飯にしようと思う。だが一人前には少し足りない。じゃあうどんも少し入れてしまおう。こうして、そばとうどんが入ったものを食べることはよくある。

        で、これがどういう味かといいますとですね、圧倒的にうどんの方が存在感があり、そばは負けてしまうということ。うどんを食べていると、同時にそばが絡まってくるという感じ。不味いとは言いませんが、けっしてそれほど旨いものではない。忙しい中でかっこむ賄い料理の域は出ません。食べ終わってまたすぐに仕事に戻るときなど、「まあいいや、とりあえずお腹は一杯になったから」と自分に言い聞かせたりする。それでもどうしても食べたいとい方にはお作りしてもいいですよ。きっと損した気になると思うけど。というわけで、かけそばうどんは商品化しません。


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