Junuary.31,2004 吉野家のカレー丼を食べてみる

        BSE問題でアメリカからの牛肉の輸入が不可能になったため、牛丼の吉野家は、牛丼に変わるメニューとしてカレー丼を売り出した。カレー丼といえば、そば屋が販売していた商品。わが店でも、ちゃんとメニューにある。

        カレー丼は、おそらくカレー南蛮が出来たことによって、そのご飯版として開発された商品だろう。カレー南蛮は、そば屋の肉南蛮にカレー風味を加えることによって出来上がった商品。その強烈な香りは、店内に充満し、食欲をそそる。何を食べようか迷いながら店内に入ったお客さんは、カレー南蛮の匂いを嗅ぐと、途端に自分もカレー南蛮が食べたくなって、カレー南蛮を注文してしまうことが多いようだ。実際、カレー南蛮がいくつか注文で出ると、そのあと、カレー南蛮の注文が続くことが多い。

        さて、カレー丼である。カレー南蛮のご飯版であるカレー丼は、カレー南蛮に比べれば、注文が入ることは少ない。そば屋のメニューの中でも丼ものの人気は、天丼、親子丼、かつ丼の三大人気と比べると、かなり低い。カレー丼の注文が入るのは、ごく珍しいといえる。私の店でも、カレー丼の注文は一日に数個。まったく無いことも多く、最も人気のない商品といえるだろう。

        カレー丼の作り方はこうだ。濃いめのそば汁に豚肉とタマネギを入れて煮立たせる。そこにカレー粉と片栗粉を水で溶いたものを加えて、丼によそったご飯の上にかける。これで完成なのだ。

        そば屋でもそれほど人気のないカレー丼という商品を、なぜ、今、吉野家が・・・・・という謎が頭をよぎる。どんな味がするのだろう? 一度、後学のためにも食べてみてはどうか。というわけで、ある日の昼に、吉野家へ行ってみた。

        久しぶりに吉野家のドアを入る。私は吉野家の牛丼は好きである。肉は柔らかいし、タレも申し分ない。よく個人経営の店で出てくる牛丼で、肉がパサパサのところがあり、がっかりしたりするのだが、吉野家のは、どういうレシピになっているのか、本当に旨い。ドアを入ってまずびっくりしたのは、店内には牛丼の文字が見当たらないことだ。奥のパネルには、ちゃんと牛丼もメニューに入っているし、牛丼を食べている人もいる。しかし、壁にはカレー丼の垂れ幕がかかり、カウンターにはカレー丼のステッカーがずらりと貼られている。なんとも、カレー丼以外のメニューは無いような感じなのだ。

        若い女性の店員さんに、カレー丼を注文する。店内はそれほど混んではいなかった。カレー丼は、しばし待たされたあとに出てきた。カレー丼本体と、プラスチック製のレンゲ、そしてグラスに入った水がトレーに置かれていた。私はそれを見て、びっくりした。カレーのルーが思っていたよりも薄いのだ。つまり、片栗粉の量が少なく、トロミが少ない。するとどうなるかという、ルーがご飯に染み通ってしまって、ご飯が露出してしまう。ご飯が上から見えてしまうというのは、見た目がよくない。



        レンゲをカレー丼に入れて食べ始める。あつあつのカレー丼は、けっして不味くはないのだが、何か物足りない。しばらく食べているうちに気がついた。なんと、このカレー丼には肉が入っていないのだ。入っているのはタマネギだけ。妙に虚しくなってきてしまった。

        食べているうちに、私は推理した。吉野家のカレー丼の作り方だ。私の考えはこうだ。吉野家はそば屋のカレー丼をヒントにしたのだろう。まず、牛丼の具を煮ている汁を鍋に入れる。このときに牛肉は入れずにタマネギだけを入れるようにする。そして、カレー粉と片栗粉を溶きいれて、掻き回し、それをご飯の入った丼にかける。

        アメリカから輸入している牛肉の在庫を、少しでも長引かせようという、それこそ文字通りの苦肉の策なのではないだろうか? しかし、そこまでやるのか、吉野家は! ちょっと考えてみよう。牛肉の入っている牛丼が280円。肉の入っていないカレー丼が400円というのは、どういうこと!? 長年吉野家の牛丼にお世話になった私だが、このカレー丼はいただけないと思う。このカレー丼を売るなら、400円はひどいと思うのだか・・・。

        ちなみに、カウンターに貼ってあったステッカーは下のようなもの。



        ご飯だって露出していないし、いかにも肉が入っているような感じだよね。


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