2012年2月19日『90ミニッツ』(PARCO劇場) 三谷幸喜、脚本・演出。出演は西村雅彦、近藤芳正のふたり。つまり『笑の大学』の第二弾みたいな企画。当然、ふたりのぶつかり合いが見どころになりそうな芝居。だが、『笑の大学』が笑いをテーマにしていたこともあって笑える芝居になっていたのに対して、『90ミニッツ』は内容がシリアスだということもあって、笑いの要素は少なかった。 9歳の少年が交通事故で病院に運ばれる。90分以内に手術を始めないと少年の命が助かる可能性が危うくなる。医師(西村雅彦)は、少年の父親(近藤芳正)に手術の承諾書にサインを求める。しかし少年の家庭は菜食主義。他人の血を輸血することを拒否する。体力が落ちている少年は輸血をしないと手術に耐えられない状態だ。サインを求める医師、拒否する父親。これだけのことで90分持たせてしまうのだから、さすがに三谷幸喜の力技と言えるだろう。 病院側が「何かあった時」のために承諾書を取るのは、ここ数年、両親の入退院、そしてこの年末から年始にかけての私の入院で経験済み。いったい何枚の承諾書にサインしたことか。サインをしなければ手術を受けられないとなればサインをせざるを得ない。しかし、ここでサインを拒否したらという発想は無かった。サインしなければ、「それでは手術はしません」で終わってしまったかもしれないが、三谷幸喜のように、それでは医師のモラルの問題はというところまで考えることは無かった。 泥仕合のように応酬される、医師と父親の主張は、あまりにシリアスすぎて、逆に笑いが生まれることもあるが、テーマがテーマだけに笑いは長続きはしない。医師側の論理が優勢になったり、父親側の論理が優勢になったり、芝居は予断を許さない展開が続く。 それで結果はどうなったのかというと、うーん、こういう結末に持ってきたかという思い。あとから考えてみると、これしかなったような気はしてくるのだが。 出演者ふたりだけの濃密な舞台。堪能した。 2月20日記 静かなお喋り 2月19日 このコーナーの表紙に戻る |