直線上に配置

客席放浪記

我らの時代 落語アルデンテ[ 鯔背(いなせ)アルデンテ

2014年2月22日
日本橋三井ホール

 開口一番、前座さんは春風亭一力『たらちね』。どうしてどうして落ち着いた話しっぷり。前座修業頑張ってね。

 春風亭百栄は、小ネタの『落語家インタビュー』を演って、「実はまだ何をやろうか考えてないのですが・・・」と言ったときにはネタに入っているという意表をついた出だし。「三題噺をやってみようかと思うこともあるのですか・・・はい? 革の財布・・・魚河岸・・・酔っ払い・・・じゃあちょっとやってみましょうかね・・・ねえ、起きておくれよ!」と、『芝浜』が始まると見せかけて、これが『ジャム浜』という新作。財布は年収の200分の一の値段のものを買ういいといういわれがあるとかで、10万円の財布を買ってもらった魚河岸で働く男。あっという間に年収2000万円稼ぐ男になってしまうが・・・という噺。『芝浜』をこういう風に改作するものかと、感心してしまった。

 三遊亭兼好『片棒』。息子の説明にいちいち反応するケチなお父さんの存在感が、ほかの演者とは違って目立っているのが特徴か? 息子たちも凄いけどね。金使いの荒い長男は「一流の料理人が腕によりをかけて・・・」と言いだせば、「握り飯に塩かけたんじゃだめ?」。派手好きの次男は葬式に聖火台に火がつく。お父さんと同じドケチの三男は「早桶? そんなものは使いません。私が丸裸にして引き摺っていく」

 「楽屋じゃなくバックヤードって書いてある。みんな浮き足立ってますよ」と春風亭一之輔。噺は『お見立て』。杢兵衛大尽、訛がひどくて、「にゅういん」が「ぬういん」、「ふうふ」が「ひいふ」になってしまう。喜助のことも「きすけ」ではなく「けぇすけ」になってまい何度直しても「けぇすけ」だから、喜助の方も、もう「けぇすけ」でいいやになっちゃってる。それが最後の方になって部屋まで杢兵衛を迎えに行き、やけになって「けぇすけですが?」と言うと「ああ、きすけか」「なんだ、言えんじゃねえのかよ!」

 トリは桃月庵白酒。もう十八番(オハコ)といえる『禁酒番屋』。「ドイツの将校」「ゲロルシュタイナー」「いかつい真鶴」「五輪真弓」といった手裏剣投げはもうすっかり名物。ベロンベロンに酔っぱらった役人をからかうようなこの噺、マクラで他人をからかう姿勢とも相まって、まさに白酒のよさが発揮された、そのものど真ん中だ。

2月25日記

静かなお喋り 2月22日

静かなお喋り

このコーナーの表紙に戻る

トップ アイコンふりだしに戻る
直線上に配置