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客席放浪記

浅草演芸ホール十二月下席夜の部

2012年12月22日

 仲入り中に入場。

 「先日、方言の話になりまして、『お前の出身地の方言で、愛してるって何ていうの?』って聞かれましたが、言ったことも言われたこともないからわかりません」と瀧川鯉八。はて、鯉八の故郷はどこだっけと調べてみたら鹿児島。鹿児島弁で「愛してる」は、インターネットで見ると、「愛しちょっど」らしい。いいなあ、豪快で。
 ところが鯉八ときたら豪快さとは真逆の芸風。『雨傘和尚』は、傘を買って来いと和尚が小僧に命じたところ、帰りに雨が降り出して、小僧がその買ったばかりの傘を差して帰ってきたことから、和尚が激怒することから始まる噺。せこい! この人の噺はのらりくらりと妙なやり取りが続いていくのが多いようだ。これにハマるかハマにないかは聴き手にもよると思うが、ところが一旦ハマってしまうと、これが病みつきになる面白さなんだなぁ。

 上方からのゲストは月亭遊方。遊園地のキャラクター・ショーに強盗が紛れ込み子供を人質に取ってしまう『戦え!サンダーマン』。東京だと浮いてしまうような噺だが、大阪弁だと、これが妙に引き込まれてしまうのが不思議。お客さん全員に「サンダーマーン!」と叫ばせる演出がこの世界に入って行かれるノリなのか。子供になった気で楽しめた一席。

 東京丸・京平は、どうやら新ネタらしい。見合い相手の仲人さんを待つ男性と、中古車ディーラーの男が顔を合わせ、お互いにトンチンカンな話をするという勘違いネタなのだが、京丸がネタをよく憶えてなくて、途中からグダグダになってしまう。そのグダグダ感がまた可笑しかったりする。「年明けには(ネタが)固まっていると思います」と言って去って行った。浅草らしいなぁ。

 出てくると、その型破りな芸風で爆笑を取る三遊亭笑遊。今日は一席やらないで漫談ムード。世間の腹の立つことを並べたあとは、お得意の自分のかみさんばなし。のろけとも自虐とも取れる話で大熱演。この人、なんでこんなにいつもテンション高いんだろう。

 笑福亭鶴光『紀州』。七代将軍家継の後継者の噺。いわゆる地噺だから大筋以外の部分は演者の雑談が聞かせどころ。後継の八代目ときたら上方では松鶴を誰が継ぐか。こうなると鶴光の話は広がっていく。とてもインターネットには書けないようなことも。ほかにも米朝が水虫の薬を目薬と間違えたとか、どこまで本当かわからない話がゴロゴロ。

 やなぎ南玉の曲ごま。末広、風車、糸渡りなど、今日も独楽が流れるように、舞台運びも艶やかに流れる。

 トリは瀧川鯉朝。今年最後の寄席にトリを取れると喜んでいたら、後輩から,「それはタイタニックから逃げ遅れたようなものです」と言われたとか。みんな年末で忙しくて誰もトリを取りたがらないらしい。そんな鯉朝のネタは『片棒』の改作『北の片棒』。かの北の国の後継者問題を古典落語『片棒』のシチュエーションを借りて新作落語にしたもの。内容は危なくて書けな〜い。

 なんだか浅草今年最後の定席は自由な活気が漲っているいるなぁ。

12月24日記

静かなお喋り 12月22日

静かなお喋り

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