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客席放浪記

浅草演芸ホール八月下席夜の部

2013年8月28日

 仲入り後の、禁演落語の会を観るために仲入りに入ったころを狙って入場。

 毎年楽しみにしている長井好弘の解説、「毎年同じだから」と言うものの、少しずつ変えてある。時間が押していると短縮も出来るようになったというからさすが。
 昭和16年、戦争の影が忍び寄る中、あまり国威高揚に繋がらないけしからぬ噺を封印して、本法寺に、はなし塚というものを建てて台本を埋めたという。空襲でこの浅草地区も全て焼野原になってしまったが、不思議とこの、はなし塚だけは燃えなかった。「いかに噺家の怨念が強いかということですね。噺家を軽んじてはいけませんよ。倍返しが来ますから」

 橘ノ圓満『子別れ(上)強飯の女郎買い』。有名な『(下)子は鎹』は道徳的な噺だから、戦争中だろうが大いに演じてもよさそうだが、この部分はひたすら能天気な楽しい部分。葬式の後に吉原へ行くというのは、いかになんでもまずかったんだろうな。

 三笑亭夢吉『疝気の虫』。去年この禁演落語の会でネタおろししたときにも観たが、あれからさらに格段の進歩をしている。疝気の虫のキャラが確立してきた感じ。そして夢吉流のサゲに唖然。

 Wモアモアは、43年前にデビューした当時のことを語るいつもの立ち話(笑)。

 瀧川鯉朝は夢吉に続いて、キ○玉の噺『にせ金』。男のあの部分を指す言葉を言ってもなかなか理解してもらえないことがある。「ふぐりですよ」「私どもの店では毎年一度、店の者を連れて旅行に行ってます」「それは福利厚生」

 「二人続けて、キ○玉の噺で下品ですねぇ。私は・・・夜這いの噺です」と桂文治『引越しの夢』。もっと生々しいや。

 ここで気分が変わって、春風亭美由紀の俗曲はうれしい流れだ。『木遣りくずし』『新土佐節』と端唄が聴けたのはうれしい。
 ♪キリギリスは 羽根で鳴くかよ セミやはらで鳴く わたしゃあなたの胸でなくよ そうだそうだ まったくだ
 「私は、これ小学生のときに憶えました。理科の授業で先生に褒められました」 ハハハハハ。
 シメは賑やかに『東京音頭』。

 トリは三遊亭金遊『権助提灯』。噺に入る前に、小さいころに住んでいた裏の家が、どこかの旦那の妾宅だったという話を長々と。昔はお妾さん。今は愛人。昔は普通の商店の商人がお妾さんを囲っているなんてザラにあった話。今はねぇー、よっぽどの金持ちじゃないと無理だね。それに今は奥様だって絶対に許さないだろうに。それにしても確かに、お妾さんを持つ噺なんて、これから戦争に行く兵隊さんには毒な噺だよなぁ。

8月29日記

静かなお喋り 8月28日

静かなお喋り

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