浅草演芸ホール十二月下席 2014年12月26日 昼の部のトリ古今亭今輔から入る。おや? なにやら今輔らしからぬ噺をしている。いつもの今輔らしいギャグじゃない。今輔のはもっと漫才のボケツッコミのような感じで進んで行くのだが、これは違う。素人が集まって芝居をやろうという相談をしている。それぞれが文芸ものがいいとか言って『父帰る』がいいとか『伊豆の踊子』がいいとか『オセロ』がいいとか喧々諤々あるいは喧々囂々。結局、衣装が出てきて『白浪五人男』に決まるのだが、後半は台詞をまったく憶えてきていない五人が起こすドタバタ。これは絶対に今輔が作ったものじゃないなと思って、帰宅してから調べてみたら、これは先代の今輔が演った『五人男』という噺らしい。どうりでねぇ。 さて、夜の部突入。夜の部は毎年恒例となった瀧川鯉朝の主任興行『ちょっぴりちがう寄席』。 開口一番、前座さんは瀧川鯉○で『新聞記事』。前座修業頑張ってね。 春風亭柳若は『壺算』。計算がわからなくなった瀬戸物屋さん、野々村議員みたいに号泣。「もう、その瓶、持って行っちゃってください」「持って行ってくれって、手間賃がかかるよ」「じゃあ、この三円も持って行ってください」。きれいだね。 コント青年団。デタラメばかり教える歴史の先生と、やたら歴史に詳しい生徒とのコント。幕末の話をすると生徒に力が入る。先生「それでは幕末の人物で、一番尊敬する人物は誰だね?」「坂本竜馬ですね」「どうして?」「好人物ですからです」「ばかやろう、そんなのは司馬遼太郎が小説にしただけで、本人がそうだったかなんてわかんないんだよ」 瀧川鯉橋は『粗忽の釘』だけど、やけに短い。向かいの家に行っちゃうとか、隣の家に上がり込んで長居しちゃうなんての無し。持ち時間が無かったのかな? 桂枝太郎は、進路を決めかねている青年の物語。自分の父親はヤクザだから、あとを継ぐことは考えられないでいたのだが、父親は実はヤクザではなくサンタクロースだった。そこでサンタクロース専門学校に進学することになる。お客さんが途中で何人か帰ってしまったのに動揺してか、「噺、変えましょうか? 昨日も一昨日も出番がなかったから、どうしても、これ演りたかったの」。アハハハハ。十分面白いよ。『サンタクロースの息子』っていうのかな。 ギタレレ漫談のぴろき。「こう見えても、妻も娘もいるんです」。客席から「えっ!」という声。「娘がめちゃくちゃ可愛いんです」「うそ!」「「その娘が外で逢ったら他人のふりしてくれって言うんです」「ひひひ」「ひひひはボクがやるんです。ひひひ」。お客さんとのやりとりが可笑しい。 「新年になると、前座さんにお年玉を渡さなければなりません。落語芸術協会、今、前座さんが20人以上。それに下座のお囃子さんやら事務員さん、うちの子供合わせると60人。一人一万円・・・あげられたらいいな」と桂米多朗。噺は『掛け取り』の『薪屋』の部分のみ。 三遊亭笑遊が出てきたら「日本一!」の声がかかった。「日本一なんて思ったことないやな」なんて言いながら、この人の何が何でも笑わせようという高座は、いつものことながら乗り乗り。『やかん』で講談の部分に入って扇子で足を叩くうちに「痛いよ」となって、そっと叩くなんて笑いを盛り込みながらも突っ走る。緩急自在。この人の噺を聴くとほんとに元気が出てくる。 紙切りの林家花。「時そば」という注文に「まだずいぶんと面倒な」と言いながらも、見事にそばの屋台、そば屋、客を切った。「冬休み」は凧揚げの様子。ここで「お正月」ってお題出したら、どうするのかな(笑)。 仲トリが春風亭柳好で『ふぐ鍋』。これだけ寒くなると、こういう噺を聴いた途端にふぐ鍋が食べたくなっちゃう。帰りに気楽に買って帰れるもんじゃないから困るのだけど。 仲入り後、クイツキが瀧川鯉斗。おおっ、『荒大名の茶の湯』だよ。もうこんな難しい噺をやるようになったのかぁ。二ツ目になってもう五年だもんなぁ。あっという間だ。 ここで今回の目玉でもある珍芸枠。今日は春雨や風子のギター演奏。なんとウェディングドレス姿で出てきた風子。婚活中のシングルマザーでこの恰好は引くわ〜(笑)。ウエーェディングドレスじゃなくてウエイティングドレスだって。『神田川』やら『瀬戸の花嫁』をギャグにしてみせた。『なんでかフラメンコ』も弾いてみせたりしていたから、なかなかセンスありそう。ギター漫談に転向もありかも。 桂文治はこのあと別のところで『掛け取り』をかける予定なので、ここで浚うつもりでいたのに前に出てしまったと打ち明けてから、「だからと言って私がやらないと思いますか?」と本当に『掛け取り』に入った。しかし米多朗の演ったのは『掛け取り』でも序に当たる『薪屋』の部分のみ。文治は何と、落語好きの借金取り相手に、春風亭柳昇の『カラオケ病院』の物真似。さらには昔々亭桃太郎の物真似(「せこい茶碗だねぇ〜」)など。爆笑の高座だった。余所でも受けるんだろうなぁ。 上方からのゲスト枠は桂文福。いやー、この人は爆弾みたいな人だね。もうサービス満載。相撲の用語をすべて英語に直すなんてネタから始まる。「横綱はグランドチャンピオン、大関は・・・ワンカップ」。オリジナルの相撲甚句で笑わせた後は、60年代歌謡曲を次から次へと切れ目なく歌いまくる。ついには「お客さん、いいかげん止めてぇな〜」。それで終わるのかと思ったら『金婚旅行』の一席。 コントD51。いつものおばあちゃんコント。冬休みになった子供が客席に多くて、こういうの受ける受ける。 瀧川鯉昇の『鰻屋』、ええーっ、電気うなぎオチ。こんなの初めて聴いた。 鏡味正二郎の太神楽。毬、出刃包丁皿回し、傘。安定しているよね、この人の曲芸は。安心して観られる。 トリの瀧川鯉朝。マエセツから入っていて、楽屋でもいろいろと気を使ってたいへんだろうに、ここにきて体力勝負の『反対俥』。若いね〜。ハネても出口でお客様のお見送り。十二月下席は七日間。明日が千秋楽になる。あと一日、頑張ってね〜。 12月28日記 静かなお喋り 12月26日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |