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客席放浪記

第152回朝練講談会

2016年1月9日
お江戸日本橋亭

 朝の9時30分からやっている講談の会。ほとんど体育会(笑)。

 三が日のあとに、成金メンバーの小痴楽、鯉八、昇々らと四泊五日のベトナム旅行に出て、昨日帰ってきたばかりだという神田松之丞。この旅がよっぽど楽しかったらしい。旅の思い出を語る。
 カジノへ行ったとき、仲間の一人が大きく賭けて大儲けしたそうで、これは『ボロ忠売り出し』のボロ忠の賭け方に似ていたと、『天保水滸伝 ボロ忠売り出し』
 松之丞の『ボロ忠売り出し』は、去年5月の『深夜寄席』でも聴いているが、あの賭場の場面は素晴らしかった。ここぞというときは、大きく賭ける。すると周りのお客さんも喜び、賭場が盛り上がる。すると賭け事の神様も喜んでくれるんだという、松之丞の作り上げた論理は、はたして本当かどうかは別として、噺を盛り上げるには面白い。
 それに何といっても、松之丞にはいいリズムがある。これは若いからできるとも言えるもので、トントーンと行ってトーンと切って盛り上げるのが普通だとしたら、松之丞にかかると、トントーントーンのあとに、さらに息を切らずにトーントーントーンと畳みかける。そのジェットコースターに乗ったような、スリリングな心地よさが、若い松之丞の持ち味。今の松之丞の、゛勢い”の講談は絶対に観ておかなけれはならない。

 神田春陽も、海外を一人旅してくるのが好きだ語る。春陽、40代。松之丞、30代。今のうちに、どんどん体験しておくといいと思う。このころ体験した旅は、トシを取ってからの旅とはまったく別なんだから。
 演目は『赤穂義士銘々伝 三村次郎左衛門 三村の薪割り』
 春陽は、松之丞に比べると落ち着いた芸風。三村次郎左衛門の朴訥とした人柄を、じっくりと描き出す。羊羹のくだりの可笑しさも楽しい。

 正月十日までは、人の死ぬような噺はやっちゃいけないという縛りが講談界にはあるそうで、ふたりとも、うまくそういうネタをすり抜けての朝練講談。爽やかな正月の朝に相応しい二席だった。

1月10日記

静かなお喋り 1月9日

静かなお喋り

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