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客席放浪記

朝練講談会

2016年3月19日
お江戸日本橋亭

 前座時代、寄席の近くの、安くておいしいカレー屋を探すのが楽しみだったとマクラで語る神田真紅。カレーライスは手軽に食べられるしカロリーも高いから、お金がない時には最適な食べ物。私も学生時代には毎日のように学食の安いカレーを食べて、浮いたお金で映画を観に行ったり、本を買ったり、落語を聴きに行ったりしていたものだった。
 日本にカレーが伝わったのは幕末。当時の海軍では脚気の病が蔓延して、それがもとで、命を落とす兵士が何人もいたのだとか。これは栄養不足が原因だと知った軍医・高木兼寛がカレーライスを食事に取り入れるようにしたという。その史実を語る『海軍カレーの父・高木兼寛』の一席。なるほど〜、勉強になりました。
 被災地の炊き出しでも、カレーライスは定番。インド生まれのカレーライスが、米食の日本人に好まれ、今や国民食になった。しかしカレーに小麦粉を入れてとろみをつけるというのは、この海軍カレーが元祖だったというのだから、現在の日本のカレー文化は、この海軍カレーのおかげなのかも。
 朝からカレーライスが食べたくなってしまったなぁ。

 神田松之丞は、先日明らかになったショーン・マクアードル・川上の経歴詐称事件にマクラで触れる。小さなウソをつくと、そのウソを隠すためにさらなるウソをつかなければならなくなる。そんなことを川上自身もコメンテーターとして言っていたんじゃないのか? と鋭い指摘。テレビ局も視聴者も騙されていたわけで、日本中がひっくり返ってしまった。
 で、今日は雨もふっていることだからと、医学を学んだわけでもないのに医者になってしまった村井長庵の噺から、『大岡政談 村井長庵(3)雨夜の裏田圃』。医学を学んだわけでも何でもないのに、医者のふりをした男。ショーン・マクアドール・川上なんかより、よっぽとたちが悪い。悪事に手を染め、妹の娘を吉原に売り飛ばし、人をそそのかして殺しを仕向け、自分もどしやぶりの雨のなか、人を殺す。この噺のなかでも、かなり凄惨な部分。
 客席はシーンとなって、このなんともすさまじい噺に聞き入る三連休の初日の雨降る早朝。松之丞も人が悪いね。う〜ん。

3月20日記

静かなお喋り 3月19日

静かなお喋り

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