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客席放浪記

熱海五郎一座・天然女房のスパイ大作戦

2014年6月29日
新橋演舞場

 伊東四朗一座のあとを受けて、東京の軽演劇を継承しようと始まった熱海五郎一座。もう10年以上になるんだ。始まった当初は、結構毎年のようにチケットを取って観に行っていたのだが、だんだん行かなくなってしまって、最近はもう何年も行っていなかった。

 今年はついに新橋演舞場一ヶ月公演に進出ということだったが、興味が湧かなかった。それで、突然、行かれなくなったからチケットを買い取ってくれないかと言われて迷った。これが1等席11000円だったり、2等席9000円だったりしたら、この芝居を観るのにそれだけの代金を払うのに躊躇しただろうが、買い取って欲しいと言われた席は、一番安い3等B席2600円。2600円なら払ってもいいかもと思い、買い取った。

 まあ、安い席だから多少観にくいのは覚悟の上。行ってみたら、なるほど安いわけだ。3階席のサイド側。ここだと、舞台の半分が死角に入ってしまう。上手側のサイド席だから、下手半分と花道は見えるものの、上手側の舞台で何か行われていることは、まるで見えず、頭の中で想像するしかない。まぁ、このくらいのことは、こんな低料金で観られるのだから想定内ではあった。しかし、この席は案外、舞台上の役者さんの台詞が聴き取りにくいのには困った。舞台慣れしているはずの役者さんたちだから、発声に問題は無いはずなのだが、三宅裕司の声も小倉久寛の声も、なんだかモゴモゴしている。ゲストの沢口靖子や、元宝塚の朝海ひかるの声もキンキンしてしまっている。中で一番聴き取りやすかったのが春風亭昇太。本来、落語家はこんな大きな会場で演ることは少ないはずだから、向いてないように思われるが、結果的には昇太の声が一番通りがいい。

 結局、なぜ熱海五郎を観なくなってしまったのかというと、なんだかストーリーがいまいち面白くなくて、笑わせ処が、楽屋落ちというのか、出演者の私生活をネタにして突っ込んだりが多いのと、役に成りきるというよりは、その場その場をグズグズにして進行させていく、その緩さが、私には鼻についてしまうからかもしれない。この手の笑いは小さな会場でやってこそ親近感も沸くのだが、こんな大きな劇場では笑いも拡散してしまう感じで、どうも引いてしまう。

 千秋楽ということもあってカーテンコールが長い。役者さんたちとしても、1ヶ月やり終えたという達成感でいっぱいなのだろうが、なんだか無駄に長かったという印象。また、3階席から、舞台に向って大声で声をかける人がいて、それ自体はかまわないのだけど、タイミングが悪いのと、何を言っているのかよく聞こえなかったりして邪魔だったし、やや、しつこく感じた。こういう掛け声って難しいんだよね。

 こういうクズグズ、クダグダさが軽演劇、大衆演劇だというなら、それは構わないが、私はもっと面白いストーリーのキチッとした台本でないと、もうあまり観たいと思わないな。テレビのバラエティ番組じゃないんだから。

6月30日記

静かなお喋り 6月29日

静かなお喋り

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