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客席放浪記

第十五回奮闘馬石の会

2015年1月25日
池袋演芸場

 開口一番、前座さんは春風亭ぽん吉『子ほめ』。春風亭小朝のお弟子さん。若いし、まだ入門して一年ちょっとだというのに、聴かせる話し方をする。期待できそうな人だなぁ。前座修業頑張ってね。

 隅田川馬石一席目は、馬石自身が住んでいる浅草が出てくる噺でもあり、名前の隅田川も出てくるところから選んだという『うなぎや』。落語の中では隅田川のことをよく大川と言ったりするのが、馬石には不満そう。浅草の観光人力車のことを、うまくマクラに入れ込んで噺へ。うなぎやの主人のくせにうなぎを捌くことが出来ず、職人に任せっぱなし。その職人がまた、年中店を空けてどっかへいっちゃう。なんとかうなぎを捕まえようとする仕種、せわしなく動く様は、ややオーバー気味くらいなのが、やけに滑稽。

 『初天神』という噺は、本来一月の噺。大抵時間の関係で後半の凧のところまで行かないで終わってしまうから、正月と言う季節感が無くなってしまい、一年中どこへ行っても聴かされるネタ。菅原道真公が生まれたのが3月25日で、死んだのが6月25日だったことから、菅原道真公を祀った天神様は、25日が縁日。つまり今日がその年に一度の初天神の日というわけだ。馬石の師匠、五街道雲助はここ十年くらい毎年浅草演芸ホール一月下席のトリを任されているが、毎年1月25日に『初天神』をかけようと狙っているそうで、ところが毎年誰かが前にやってしまうか、『真田小僧』あたりが前に出て、ネタがついてしまい、残念がっていると秘密の打ち明け話。この噺、三遊亭遊雀がとんでもない子供を出した辺りから、誰もがどんどん怪物みたいな子供をこぞって出すようになってきたが、馬石は、割とオーソドックスなタイプの男の子でやっている。と見せかけて、こいつがまたとんでもないタマなんだなぁ。この噺で一番面白いところであろう団子を大胆にカット。飴玉からいきなり凧に行ってしまう。これはマクラで自分は縁日の屋台で食べ物よりも輪投げの方が好きだったというエピソードをカミングアウトしたのが伏線になっていたようだ。当初はカワイイ男の子といった印象だった子供が、水たまりに注意しろと父親に叩かれるや、「なにするんでぇー!」と突然大人びた声になる。凧を買ってもらいたいがために家で待っていたんだと父親に言いだすのだから知能犯。

 三席目は『お直し』。この噺は、人によって好き嫌いが別れるから、聴きたくない人は来ないようにということで、前もってネタ出ししたとのこと。でも聴いたことない人がこの噺、どんな噺なんだろうと興味を持って聴きに来た場合には、やはり嫌いだと思う人も出てくるだろう。どうにもこうにもならなくなった吉原の元女郎と客引きの夫婦が、ケコロと言われる、いわば最底辺の売春・風俗ワークで働く噺。いやー、決して爆笑できる噺でもなければ、人情噺のように感動できる噺でもない。それでもあくまでプロの女郎に徹しようとする女と、それに焼きもちを焼く男の心情を描く噺。凄く辛い噺なんだけど、男と女って、そうなんだよなぁとしみじみと感じてしまう。難しい噺だと思うが、馬石、さすがだね。

1月26日記

静かなお喋り 1月25日

静かなお喋り

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