ボクの妻と結婚してください 2014年3月2日 天王洲・銀河劇場 行かれなくなった知人のチケットを買い取っての観劇。おそらく自分から積極的にチケットを取ってまで観に行くことは無かっただろう芝居。 原作は放送作家でもある樋口卓治。主演の内村光良は、原作者を思わせる放送作家の役。ある日、膵臓癌で余命三ヶ月の宣告を受ける。しかし彼は、そのことを妻(木村多江)に告白できない。自分が死んだら、彼女には幸せになってほしいと思う。しかし、自分の代わりに、誰か別の男性と再婚されるなら、自分も気に入った男性と結婚してもらいたい。そこで彼は、妻の婚活を始める。 ありえないような話なのだが、不思議と内村光良が演ると、このキャラクターが変だとは思えなくなる。ウッちゃんならそうするかもと思えてくる。 それでも、いままで、ずっと独身を通してきた私なんかからすると、夫婦のことってイマイチよくわからない。自分がこの芝居の主人公だったら、同じように自分が死んだあとの妻の再婚相手を、自分が捜して選ぶなんていう気持ちになるかどうか、まったくわからない。しかも、この夫婦、物凄く仲がいいのだ。おそらく喧嘩ひとつしたことが無いのだろう。もう、絵に描いたような幸せな夫婦。そんな夫婦もありえないと思うが、妻役が木村多江となると、こりゃあ良妻賢母だろうし、夫に気遣うことも人並み外れているだろうと思わせてしまう。 私も癌宣告を受けたクチだが、割と冷静だった。ステージ4まで行っていたが手術で治るかもしれないと言われたこともあるし、自分の運命を面白がって客観的に見てしまう傾向があるので、「へぇー、私の人生って、こう来るのか」という思いで、「参ったなぁ」とも思ったけれど、その一方でまるで映画や小説で、話が急展開したときのワクワク感すらあった。そしてまたその時は、独身者であることにホッとした。自分の妻や子供の心配も無く、心置きなく死んでいける。誰にも迷惑をかけずに、ひっそりと死ねたら本望だとすら感じた。 内村扮する主人公の考えは、屈折していながら、ある意味傲慢でもある。妻が自分の意に沿わない男と結婚されては困るというのは、妻の気持ちを考えていない。妻としては、再婚を望んでいないかもしれないし、夫が気に入った男と再婚する気になるかどうか、それも妻の自由。 しかし、この妻は、その上を行ってるんだねぇ。さすが木村多江・・・って妄想が先行しちゃうのだけれど、夫のことを察して、夫のシナリオに乗ってあげるんだけれど、もっと深いことを計画している。ひとり身で死んでいけることをよかったと感じるであろう私だが、こんな奥さんがもしいたら、そりゃあ幸せな最後を迎えられるだろうけれど。 うまい伏線がラストに繋がり、「なるほど」と思わせたが、もっと驚いたのがカーテンコールでのトーク。息子役の役者さんが、「えーっ!」という人で、こちらもダブルの伏線になっていて、「やられたぁー」。 3月3日記 静かなお喋り 3月2日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |