ブロッケンの妖怪 2015年11月26日 シアタークリエ 絵本作家の打越(竹中直人)は編集者の黒柳(生瀬勝久)と一緒に、湖に浮かぶ小島に建つ洋館に滞在するためにやってくる。同行者はもうひとり、打越のアシスタントと称する恋人桃(安藤聖)。洋館には館の主人日ノ原虹子(高橋惠子)や、その娘小真代(佐々木希)、使用人なども住んでいる。打越はここで絵本を書くはずが、さっぱり仕事が進まない。そしてこの家の女主人や娘には、なにか隠し事があるらしい。やがて打越は桃との関係もありながら、小悪魔のような小真代と接近し始める。 前半は何か起こりそうでいて、なかなか話が進まずに、途中でやや退屈し始めてしまった。二時間に満たない芝居だが、ちょうど半分まで来たところで急展開する。あっと言うことが起こるのだが、この手の話は割とあるので、それほど新味はない。しかし舞台での見せ方に工夫があって面白い。転換の場面で竹中たちが客席に降りてきて芝居を繰り広げているうちに舞台が「えーっ!?」と変わっていたのにびっくり。 以下、ネタバレします。 霧の濃い日には、湖面の向こうに、この洋館とそっくりな建物が建つ島が浮かんで見えるのだが、打越たちが滞在中のある日、霧の中から島が現れ、こちらに近づいてきて島同士がくっつく。と、向こうの洋館にも小真代の姿が。それだけではない打越たちの姿も見える。向こうはこちらとは別空間に存在する鏡合わせになった世界。しかし中の人物たちは、こちらとは微妙に違う。打越は真面目に創作活動に打ち込む働き者だし、こちらでは真面目な黒柳は向こうでは派手好きな遊び人。そのなかで向こうにいる小真代は実は本当はこちら側の小真代。四年前に島と島がくっついたときに入れ替わってしまっていたのだった。 ほとんどの人が一人二役という形になって、出たり入ったりということを繰り返す。その面白さはある。ただどうだろう。この際、もっと頻繁に人物が入れ替わるという台本にしたら、可笑しさは倍増したんじゃないだろうか。そういうのは人の好き好きってことかもしれないけれど。 11月27日記 静かなお喋り 11月26日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |