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客席放浪記

2012年3月16日第三十一回新文芸坐落語会・若手精鋭競演

 古今亭志ん朝の最後の弟子といわれる古今亭朝太、今回のサブタイトルが、若手精鋭競演となっていることに触れ、「若手は確かにそうなんですが、精鋭なんですかどうか・・・。若手の精鋭を発掘しようなんてお思いにならないように、楽な感じでお聞きください」って、そういえば志ん朝もそういう感じで始め事が多かったよなあ。ネタは『熊の皮』。ぽちゃとした体型に、ほわっとした噺がよく合う人だ。

 落語芸術協会からは三遊亭遊馬。ネタの『明烏』を軽妙に進めていく。「お引け」になって、さらわれていく若旦那の腰の引け方がなんともリアルで可笑しい。

 先月、平成中村座での公演で、高田文夫から「談志から褒められた事」というお題を貰って咄嗟に思いつかなかったが、あとから思い出したというエピソードを立川生志が語ってくれる。「師匠は部分入歯しているんですが、それを無くしてしまった。それを、見つけたら一万円やるから捜せって言うんです。洗面所の排水溝に挟まっていたのを見つけたら、喜んでくれて、5000円くれました。えっ! 一万円なんじゃなかったの?」 ネタは『らくだ』。屑屋さん、飲むうちに酔っ払ってきて、精進料理の煮しめを食べて「芋で酒が飲めるかー!」 わかる気がする。ずへへへへ。

 トリは柳家三三の講談ネタ『魚屋本多』。一休みしている魚屋が高価そうな水飲み柄杓で水を飲んでいるところを、目に止めたお殿様が、この魚屋を屋敷に入れるところから始まるこの噺。何も落語で演ることもないと思ったのだが、講談が衰退の一歩の昨今、こういうのもアリかなと思えてくる。いや、むしろこの噺など、聴いているうちに落語でやった方がいいのかも、とさえ思えてくる。三三も、この会の客層なら演ってもいいだろうと思って出して来たのだろうし。ちょっと得した気分。ふふふ。

3月17日記

静かなお喋り 3月16日

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