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客席放浪記

ブス会*
男女逆転版・痴人の愛


2017年12月10日
こまばアゴラ劇場

 これまでのブス会*は、複数の女性が登場して、男にはなかなかわからない女同士のドロドロした妬みの世界が中心で、男の私からすれば、見ちゃいけないものを、まるで関係ない第三者の立場から眺めて、「これだから女は」とニヤニヤしていたようなところがある。それが今回の作品は、主演が安藤玉恵であとは男優の名前がふたりあるだけ。これは今までとは違う芝居なんだなと思わせる。しかも谷崎潤一郎の『痴人の愛』を基にして、男女を入れ替えたらどうなるかという構想。興味をそそられるではないか。

 アラフォー女性のヨーコ(安藤玉恵)は、ある雨の日に15歳の身元不明の少年ナオミと出遭い、自分の家に連れ帰る。ヨーコは独身だが、もう結婚だの出産だのが面倒になっていて、このナオミを自分の子供として育てる決心を固める。
 ナオミは高校生になり、ヨーコはナオミに勉強して、いい大学に進学するように薦める。しかしこのころからどうもナオミは、それほど勉強が得意な子ではないことが薄々わかって来る。
 結局、ナオミは勉強には興味が持てず、進学したのは大学ではなく専門学校。それもミュージシャンを目指すための学校で、大学の音楽学部とはかなり趣が違う。学校に通い始めたナオミは有名大学の音楽好きの学生と友達になり、ギターの練習を始めたりするが、これも実はあまり才能がなさそう。ヨーコに金を出してもらい立派なホールで演奏会を開くが、演奏曲目は人気バンドのコピー。ナオミは予想以上のクズで、多くの女とも男とも肉体関係を結び、遊ぶ金を借りまくっている。それでもヨーコはナオミを見放さない。
 「ダメな子ほどかわいい」というのは親心なのか?

 クズなナオミの描き方が、ブス会*の母体となった三浦大輔のボツドールに比べると、生ぬるく感じてしまう。もっトクズはクズでダメなやつという突き放し方がない。そこのところがやはり女性ペヤンヌマキだからなのか。

 ナオミのことが心配になり、あとをつけるヨーコ。実態を知り、問い詰めると、ナオミから自分を「ババア」呼ばわりされて、遂にキレてしまう。20歳の若者にとって、45歳の女は「ババア」て゜しかないのだ。
 子供を育てる母親のつもりでナオミに接してきたヨーコは45歳になっても実は女で、心のどこかでナオミをセックスの対象として見ていた。それを否定された時ヨーコは。

 いままでのブス会*とは違ったアプローチから女を描いた作品で、これまたなんとも見てはいけない女性の部分を見てしまったという気にさせられた。

 やはり男にとって、女の心の世界は深い闇だな。

12月11日記

静かなお喋り 12月10日

静かなお喋り

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