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客席放浪記

2012年10月13日 ブス会* 女のみち2012(ザ・スズナリ)

 ポツドールから発展的独立したブス会*の第3回公演。

 前2回は小さな劇場でかなり窮屈な思いをして観たが、今回はそこよりは大きいザ・スズナリ。それでもチケットは完売らしく、さらに補助席を作ってどんどんお客さんを入れていく。

 定刻10分押しくらいで開演。

 今回の演目は2006年にポツドール番外企画として上演した『女のみち』の続編にあたる。なにしろ6年も前に観たから内容はほとんど忘れている。それでも観ているうちに前作のことを薄々と思い出した。

 今回も舞台はAV撮影現場とその控室。アイドルからAVに転向したマリナを中心にしたレズものの撮影中。妊娠したらしいと産婦人科にやってきたマリナを女医のリカコと、看護師のルミとカエデがいたぶっている。そこに「カット!」の声。この入り方は前作と同じ。

 そこへもうひとり女優がやってくる。カスミと名乗る、この女、リカコに盛んに懐かしそうな顔をしている。カスミは一度引退して、また五年ぶりにAVの現場に復帰したばかり。実は前作から引き続いて出演しているのがこのふたりのキャラクター。カスミは前作では新人女優だった。やはりレズもののビデオでいたぶられ役。
 リカコはあのころから一貫してAV女優を続けていて、今では事務所も経営するなど大忙しの上、子供までいる。
 カスミはリカコの生き方を尊敬していて、復帰したのも、中途半端だった現役時代を反省して、もう一度AVに真剣に取り組もうとしている。ところが、いざ撮影が始まってしまうと、何をやってもうまくいかない。ほかの人の足を引っ張ってしまって、撮影時間は延びるばかり。

 前2回は、スナックの話と掃除婦の話。どちらも面白かったが、やはりAVというテーマだとインパクトが強い。例によって、誰かがいなくなると残った人間で、そのいない人間の陰口が始まる。それが面白くて面白くて。その陰口から聞こえてくるお互いの不満がラストで一気に爆発するのが今回も見どころ。
 それも、ブス会*の場合、爆発するだけ爆発すると、急に仲直りが始まるのも同じ。

 なんとなく八方丸く治まり、エピローグのような形で女優さんがひとりひとり消えていく。そこでそれまで、ぶりっこのようにしていたマリナが一番したたかな生き方をしているのがわかる結末は面白い。それを知って呆然としているカスミがやがて元気を出して立ち上がっていく姿に、いやいや、どうして、女はみんなしたたかに生きているんだという気になる。

 きわどい台詞や内容なのだが女性客が多く、みなさん、あっけらかんと笑っている。これはブス会*になってからの傾向で、2006年の『女のみち』のときはまだお客さんはほとんど男。自分は、「これはむしろ女性に観て欲しい」と、ここに書いていたくらい。
 もっともっとたくさんの人に観て欲しい。これは女性のいやらしい部分もあぶりだすと同時に、女性たちへの応援歌でもあるからだ。

10月15日記

参考 客席放浪記 2006年7月

静かなお喋り 10月13日

静かなお喋り

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