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客席放浪記

第13回Coredo落語会

2018年3月24日
日本橋三井ホール

 開口一番は一之輔の弟子の春風亭きいち。一之輔が出る落語会ではきいちが開口一番を務めることが多いようだ。前座さんのうちから大きなホールでの高座は緊張するだろうが、いい経験になるんだろうな。
 『道具屋』。一之輔に習ったのか、一之輔が入れそうなギャグが入っていて、面白く聴ける。前座さんでもけっこう笑が来るのは、こういう工夫が噺に入っているからだろう。

 その春風亭一之輔『粗忽の釘』。こういう聴き飽きているような噺でも一之輔にかかると、改装されて面白く聴ける。箪笥を背負って迷子になっている間に、おかみさんが暇潰しに縄跳びをやっていたなんてことが出て来て、想像すると可笑しくて可笑しくて。一之助ならどんな噺でも聴いてみたい。そんな気になる。

 柳家喬太郎『紙入れ』。すでに何回か喬太郎で聴いている噺だが、男を誘う女が色っぽくて、これなら男は、相手が人妻だろうとなびいちゃう。しかもやけにエロチックだったり、可愛いい仕種をしてみたり、ぶりっこだったり、しかもしたたかだったり。男が女を好きになる要素がたっぷり盛り込んである。思わず真剣に観ちゃうよね。

 桃月庵白酒『宿屋の仇討ち』。こちらも白酒らしい聞き違いギャグが豊富に盛り込んであったりして面白い。三人客が相撲を始めてしまうところでは、今の相撲界のゴタゴタを取り込んで可笑しさが加速。

 一之輔、喬太郎、白酒という並びは、おそらく今の落語界では最強だろう。古典落語に工夫を加えて本筋は変えずに、新しく面白く聴かせるという意味では、この三人の右に出る人はいないと思う。
 仲入りを挟んで出てきた柳家権太楼が、「袖でずーっと聴いてて疲れちゃった」と言っていたが、そうかもしれない。こういう並びは寄席ではまずありえない。この三人は面白いことには違いないのだが、いわばカンフル剤のようなもので、面白いからついつい全力で聴いてしまう。色物が入ったり、こういっちゃ失礼だろうが聴き流せる落語が間に入らないと疲れてしまう。権太郎は「仲入り前は一之輔と白酒にして、仲入りがあって、喬太郎には『午後の保健室』あたりをやってもらって、私が出てきた方が並びがいい」と言っていたが、まさにそうだろうと思う。

 その権太楼の『百年目』。使用人に厳しい番頭さんが、こっそり遊びに行って旦那に見つかってしまう。そのことを後悔する描写が何回もあり、その無念さが伝わって来る。旦那に言われて呼びに来た定吉の言葉に上の空で「あのときオカに上がるんじゃなかった」と何回も繰り返す。返事がないので定吉がまた何回も「旦那さんがお呼びです」と繰り返すものだから、つい「今行くと言っておけ!」と怒鳴ってしまう。これがうまい。
 しかし、栴檀と南縁草の説明をした旦那が、下の者はもっとのびのびとさせてあげないといけないと言っているにもかかわらず、けっこう使用人を怒鳴りつけていたり。人間なかなか思っていることと、出てしまうことは違うってことなのですかね。
 いやいやこの噺、実に奥が深い。

3月25日記

静かなお喋り 3月24日

静かなお喋り

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