クリプトグラム 2013年11月7日 シアタートラム 以前、『スリル・オブ・ゲーム』(House Of Games)という映画を、テレビの吹き替え版で観たことがあった。詐欺師の話なのだが、これがやけに面白かった。のちにこの映画の脚本・監督はデヴィット・マメットという人だと知った。 アメリカの映画にしては、やけに意地が悪いなと思った。もっともそこが面白いと思った理由。 1999年の永作博美、長塚京三で『オレアナ』が上演されたときも観に行った。これも大学教授と女子学生のセクハラをテーマにした話で、嫌〜な気にさせられたが、その台詞の応酬は圧倒的。これもやたらと意地が悪い芝居。 『GGR』も、『摩天楼を夢見て』という映画になった作品だが、一昨年天王洲銀河劇場で上演されたときに観に行っている。これも原野商法詐欺の話。華やかな舞台の割には、これまた意地の悪い話だった。 そして、今回の『クリプトグラム』だ。 登場人物はデル(谷原章介)、ドニー(安田成美)、そしてジョン(子役)の3人だけ。舞台は家のリビング。 短い台詞が速射砲のように飛び交う。説明的な台詞がほとんどなく、どういう話なのか最初のうちはよくわからない。いや、正確に言うと最後までよくわからない。どうもそれがマメットの狙いらしい。 3人の関係も、両親とその子供と思えていたものが、やがて、どうやらドニーとジョンは母と子、そしてデルは舞台には最後まで出て来ない父親の友人らしいということがわかってくる。 いったい何があったのだろうと考えながら観ていると、断片を繋ぎ合わせているうちに、ああこういうことなのかなと思える線が見えてくるが、それもいつしか打ち消される。さらにまた一度分解して組み立て直してみるとおぼろげに現れる話が見えてきたりするが、それも確かではない。 結局、芝居は何も説明をしないで終わってしまった。これは観る人によっていろいろな背景を想像させようとする芝居らしい。観終わった後も、いろいろと台詞を思い返しては話を組み立ててみたのだが、よくわからない。 なんか、手の込んだ詐欺にあったような、やっぱり意地の悪い芝居だった。 11月8日記 静かなお喋り 11月7日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |