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客席放浪記

太福三席

2016年7月15日
日本浪曲協会広間

 二ヶ月に一度の、玉川太福のこの会に来るようになって3回目。浪曲という芸能に気後れしていたのだが、この人のおかげで興味が出てきた。

 浪曲を始める前に、太福が最近手に入れたという35年くらい前の雑誌『浪曲展望』10号の記事の紹介。それによると、もうそのころから浪曲の衰退が叫ばれていて、なんとかしなければいけない、古いものに囚われず、新しい試みをしていかなければいけないといった記事が並んでいる。私が演芸に興味を持った50年前だって、すでに浪曲は何か特殊な世界のもので、受け入れにくかった。もう半世紀に渡って、なんとかしなくちゃいけないと言われ続けていたものなのだ。

 仲入り前の二席は、『清水次郎長伝』。その最初の二話、『次郎長と法印大五郎』『次郎長出立』
 講談では次郎長の生い立ちから始まるが、浪曲の方は、すでに次郎長が一家を成し、大政、小政はじめ、子分が何人も付いてるところから始まる。賭場荒らしで自分の子分たちから川に投げ込まれようとしている法印大五郎を救って話を聞く次郎長。ここで竹居のども安の話が出てくる。へえ〜、そういう展開なんだ。
 一話目の切れ場が、ほとんど『真田小僧』状態。「そこで切るか!」と、追加のオアシを払いたくなるほど。アハハハハ。いやいや、二話目も、まあ実にいいところで切っている。ええーっ、この先って、今度はいつ聴くことができるんだ?

 仲入り後は『地べたの二人』の第三話『浴槽の二人』。例のコンビ、斎藤と金井が、仕事帰りに銭湯に行く噺。50代で家庭もある斎藤と、まだアラサー独身の金井の、世代間ギャップが今回も楽しい。金井の履いているボクサーパンツに興味をしめす斎藤。自分で下着を買いに行かないとボクサーパンツなんてわからない。いつまでも下着はブリーフかトランクス。この感じ、よくわかるんだよなぁ。
 このシリーズいつまで続くのか未定だそうだが、最後の噺のアイデアはもう決まっているんだそうだ。

 私が太福に興味を持ったのも、この新作浪曲。これをとっかかりに浪曲が好きになる人が増えれば、浪曲の未来はまだまだ捨てたもんじゃない気がする。

7月16日記

静かなお喋り 7月15日

静かなお喋り

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