直線上に配置

客席放浪記

太福三席

2018年6月2日
木馬亭

 玉川太福、先月は出番が多かったそうだ。[道楽亭]一日四席五日間連続も満員。そのあとの[新宿末廣亭]初出演も、平日昼間というのにたくさんの人が集まったとのこと。当然、今夜の[木馬亭]もお客さんでいっぱい。
 曲師は玉川みね子

 一席目は、なにも起こらない斎藤と金井のシリーズから『地べたの二人 配線ほぐし』
 絡み合った配線をほとこうとしている二人だが、とりあえず写真に撮ってみようと金井がスマホを取り出して撮影。年上の斎藤に見せるが、斎藤はスマホを見るのが初めて。拡大機能に興味を持ち、いじっているうちに、金井が以前に撮ったネコの写真が出てきて、今度はネコの写真に夢中になってしまう。それだけのスケッチなのだが、この何も起こらない様子がやけに面白く、このシリーズを楽しみにしてしまうんだよな〜。

 二席目は稲田和浩作の新作浪曲『浪花節じいさん』
 90過ぎの浪花節を唸るのが大好きなおじいさん。家族にも迷惑がられて、外で一節唸っていると、昔少しだけ浪曲の三味線を齧ったことがあるというおばあさんに声をかけられる。ふたりはたちまち意気投合。孫がラップで祭の余興に出ることを知り、自分たちも浪曲で参加することになる。
 『天保水滸伝』の一節を取り込んでの、楽しい一席だった。

 仲入り後は『紺屋高尾』
 落語でよく耳にする演目だが、浪曲でもあるんだね。浪曲は落語よりもコミカルな演出が施されているようだ。
 一番特徴的なのは、一夜明けてからの繁蔵。まだ相変わらず「あいよ、あいよ」しか言わないというのも可笑しいが、高尾太夫から「今度はいつ来てくんなます」と訊かれて、初めて自分が染物屋の職人で、15両の金を貯めるには3年かかる。3年のうちには花魁も身請けされてしまうだろうから、もう2度と来ることはできないんだと切々と訴える。落語ではこの部分はあっさり流してしまうが、こうやって聴くと、浪曲の方が落語よりも高尾太夫の心の揺れが理解できる。いや〜、聴き比べてみるものだな〜。

6月3日記

静かなお喋り 6月2日

静かなお喋り

このコーナーの表紙に戻る

トップ アイコンふりだしに戻る
直線上に配置