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客席放浪記

断色danjiki

2013年6月22日
青山円形劇場

 いのうえひでのり演出で、主演が堤真一。というと、この4月に『今ひとたびの修羅』を観たばかりではないか。あれはよかった。だからこれも観に行かねばなるまい。

 青山円形劇場というのは私の好きな劇場のひとつ。とにかくどの位置で観ても舞台との距離が近い。文字通りの円形劇場で、役者は四方を客席から見られ、どちらを向いて演技していいかわからないかもしれないが、観る側からしたら、たとえ役者が真後ろを向いていても、その表情をイメージする楽しみもあり、私はあまり気にならない。気に入った芝居など、今度は別の角度から、もう一度観てみたいなと思ったりする。だから、この円形舞台をそのまま使った芝居が好きだ。使う側はときどき客席の一部を潰して舞台にしてしまったりもするが、あれはもったいない。どうしてもセットを作りたいからなのだろうが、それだったらほかの劇場を使えばいい。『断色』は背景のセット無し。場面転換をする場合には、簡単な道具を運び込む。場面によっては何も置いてない舞台での演技となる。さらにうまいと思うのは、背景のセット組まない代わりに、必要に応じて客席の後ろの360度の壁にスライドを投影して背景にしてしまう。これがいい。

 小杉保(堤真一)の母(麻生久美子)が亡くなり、クローン保険なる会社の社員(田中哲司)がやってくる。母は自分のクローンを作っていて、乳癌や腎不全のときにクローンから臓器を得ていた。それが母の死去によって、残されたクローンをどうするかという相談を持ってきたのだ。ひとつは処分。この世から抹消する。もうひとつは解放。自由に生きる道を選ばせる。しのびなく思った保は、クローンを解放させ自分と一緒に住まわせる道を選ぶ。ところが・・・。といったストーリー。

 SFとして話がよく出来ている。後半のドロドロ、ゴチャゴチャした展開は私はちょっと苦手だが、これは私の好みだけの問題かも。それにしても、うまく作ったストーリーだと思う。

 かなり際どい台詞がいっぱいある。セックスや風俗の特殊用語がポンポン飛び出すが、それを麻生久美子は平然と口にする。クローン役だから、そういう単語を恥ずかしがっていてはいけないのだが、さすがの女優さんですね。台詞だけでなく実際に際どい場面も多い。田中哲司のパンツの中に手を突っ込んで×××××××とか、横になって×××××××とか、そこまでやるかという過激さ。至近距離で観ている私たちは、思わず息を飲んでしまう。女性客の率もかなり高いが、女性でなくとも圧倒されてしまう。

 1時間50分、過不足ない中身の濃い3人だけの芝居。それをこの規模の劇場で観られたことに感動した。どうやらこの劇場も近く無くなるらしいとの話も聞く。これは伝説の舞台と言っていいかもしれない。

6月23日記

静かなお喋り 6月22日

静かなお喋り

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