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客席放浪記

立川談幸・納涼古典落語の会

2015年8月29日
浜町区民館

 区の広報誌に、入場無料だと書かれていたので出かけることにした。浜町区民館ってどこだ? と思って調べてみたら、以前は浜町会館と言っていたところ。

 かれこれ30年くらい前だろうか、出前の注文をもらった。浜町会館で会議があるので天丼を30だか40だか持って来てくれとのことだった。当時、明治座の近くに浜町会館という建物があり、そこは主に明治座の稽古場として使われていて、よく出前を届けていた。いつもよりちょっと数が多いのが不思議だったが、出演者全員で食べるんだろうくらいに思って持って行った。ところが届けに行くと「注文していない」という驚きの返事。電話で確かに浜町会館とうかがったのだがと言うと、それは浜町三丁目にある浜町会館のことではないかとの返事。ええーっ、三丁目にも浜町会館なるものがあるのか。店に戻って地図を広げてみると、確かに三丁目の一番奥に、浜町会館という建物があるではないか。まぎらわしいなぁ。しかもここは私の店からはかなり離れている。正直、浜町三丁目への出前はお断りしているのだ。しかし受けてしまったし、天丼も出来てしまったので、急いで届けに行った。

 ここに行くのは、それ以来のことだから、今回道に迷いながら、ようやくのことで辿り着いた。予約してあったので名前を告げる。なぜか粗品のようなものを渡された。開けてみると、扇子が一本。無料で落語が聴ける上に扇子までもらえる。すごく得した気分。どうやらこの会、区から会館の運営を委託された民間業者の企画したもののようで、去年に続いて二回目らしい。

 まずは談幸のお弟子さんの、立川幸之進が高座に上がる。身長186cm。天井に頭をぶつけないか気にしながら登って行く。談幸一門は、落語芸術協会に移籍したことに伴い、寄席での前座経験のない弟子の吉幸が一年、香之進は二年の寄席での楽屋仕事を課せられている最中。長身の幸之進は、さぞ狭い楽屋で苦労していることだろうなぁ。『寄合酒』を前座とは思えない達者な口調で演じる。そりゃそうだ、芸歴11年の前座さんだもの。前座修業頑張ってね。

 今日は朝から雨。お客さんの入りが心配されたが、蓋を開けてみれば会場はだいぶ埋まっている。「田舎の方の落語会に呼ばれたとき、強い雨が降っていたことがあります。主催者さんに『今日、お客さんは来て下さるでしょうか?』と言ったら、『今日はたくさんみえるでしょう。天気がいいとみんな稲刈りに行ってますから』。立川談幸の一席目は『茶の湯』。定吉の買ってきたのは抹茶ではなくて、角の乾物屋で買ってきた青きな粉。角の乾物屋は幸之進の『寄合酒』といい、縁があるね。

 もう一席は『紺屋高尾』。高尾太夫に会いたさに、三年間働いてお金を貯めて一夜を過ごした久蔵。花魁に「今度は、いつ来てくんなます?」と訊かれて、「あと三年」「斡旋利得罪で小菅刑務所に入るんですか?」とは、花魁もシャレがわかるね。アハハハハ。こういう花魁となら、のちのち仲良くやっていけますな。

 談幸は奇をてらわない、きれいな落語を演る人。普段あまり落語を聴かない人にも自然に落語の楽しさを伝えられる。この落語会を企画した人も、いい人選だったと思う。

8月30日記

静かなお喋り 8月29日

静かなお喋り

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