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客席放浪記

第12回談之助・唐沢の落語アカデミア

2016年3月8日
道楽亭

 この会に来るのもこれで三回目。落語を取り巻くもろもろの話が聞けるので、面白いし勉強にもなるので、足を運んでいる。

 まずは立川談之助唐沢俊一の挨拶から。先月亡くなった講談の神田陽司の話題がメイン。53歳の若さで肝硬変で亡くなったというのはショックだった。そんなにお酒を飲む人ではないと思われていたそうだが、内に籠るタイプだったんじゃないかとの指摘も。新作講談も多かった人で、本人のHPにはその台本も残っている。『ノストラダムスの生涯』は消えてしまう前に読んでみたいし、『スティーブ・ジョブズ』は Tou Tube に上がっている。しかし生きているうちにちゃんと追いかけて聴いていればよかったなぁ。

 立川談之助が一席。神田陽司の話が出たところで講談ネタ。談志が演っていた『鮫講釈』を談之助で聴いたことが一度あるが、今日は『五目講釈』。談之助は談志が『五目講釈』を演ったのを一度だけ袖で観たことがあるそうで、その談志版『五目講釈』を基に、自分なりの演出を加えたそうだ。講釈の部分に新旧の講談師の物真似を入れるという凝った趣向。講談をあまり聴いてこなかった私にはわからない人が多かった。それでもポルノ講談の田辺夕鶴は懐かしかった。もうすっかり忘れていた。田辺夕鶴って、今はどうしているんだろう? 名前を聞かなくなっているよなぁ。

 仲入り後に、談之助と唐沢のトーク『落語評論とは何か?』。過去の落語評論家三人、野村無名庵、正岡容、安藤鶴夫の名前を上げ、落語評論とは何なのかを語っていく。
 野村無名庵は、初めて文字で落語を評論した人。そして正岡容は評論家であると同時に各大学の落語研究会に大きな影響を与えた人。
 そして安藤鶴夫。私は不勉強で、あとのふたりどころか、この戦後落語界に大きな影響を与えた人物の本を一冊も読んだことがない。とにかく面白いんだそうだ。文章力の上手さでは中毒になるほどだそうで、みんな夢中になってしまったらしい。安藤は古典落語という言葉を作った人。それまでの落語界は新作派全盛で、寄席で受けていたのはみんな新作の人。それを安藤が自分の尺度で、いい落語とだめな落語に分け、自分でプロデュースした落語会を催すようになる。そこから文楽、圓生らを中心にした古典落語が、ホール落語という形で注目されていったわけだ。しかし、落語にいい落語、悪い落語なんていうものがあるだろうかという疑問が残る。それはあくまで安藤の好き嫌いで分けられたもので、安藤から弾かれた落語はダメな落語かというと、そんなことはない。寄席で普通のお客さんに受けていたのは、あいかわらず歌奴であり痴楽であり三平だったのだ。

 落語評論に関して一時間ほどのトークが続いたが、ここには書けないことも多い。トークの結論として、プロデューサーの手腕もある評論家を待望したところで時間切れで終了。今回もいろいろと参考になることが多かった。、

3月9日記

静かなお喋り 3月8日

静かなお喋り

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