第16回談之助・唐沢の落語アカデミア 2016年11月8日 道楽亭 隔月て行われている立川談之助、唐沢俊一のこの会を、最初に観に来たのは去年の9月。以来、欠かさず来ているから、これで8回目ということになる。 まずは二人の挨拶。韓国朴大統領の占い師問題などの時事テーマ。 立川談之助の一席は『子ほめ』。しかしただの『子ほめ』ではない。師匠談志に教わるときにテープに吹き込んだものを再現するというもの。そういえば談志の『子ほめ』なんて聴いたことがない。談志らしい笑いも入っていて、とても新鮮。しかしそれ以上に面白いのは、談志は一席丸ごとそのまま演るのではなく、ところどころ止めて、そこにいろいろ説明を入れる。所作の入れ方やら、ギャグの解説(具体例をあげて「こういう言い方をするやつがいるが、それは田舎もんだ、ドサだ」だとか)、壮かと思うと、あまり関係ない雑学など。それがいかにも談志らしい。いささか誇張もあるのだろうが可笑しいし、なるほどなと思う。最後に談之助、「これで皆さんも『子ほめ』ができますから稽古してください・・・こんなテープで憶えられるか!」。アハハハハ。 後半はふたりのトークで『アマチュア落語の是非』。 私の母が老人ホームに入っていた時、施設の人と話していたら、「昨日、落語家さんが慰問に来てくれたんですよ」と言うので、気になって「誰ですか?と訊いてみたら全然知らない天狗連と言われるアマの人だった。 落語家のプロとアマの区別というのは、建前としては、プロの噺家に弟子入りしている人のこと。ところがこれが近年だんだん崩れて行っている。役者さんやお笑い芸人がテレビや舞台で堂々とやっている。風間杜夫など定期的に[横浜にぎわい座]の高座に上がって入場料を取って口演している。素人さんでも金を取って落語会をやっていたり、慰問、ボランティアという形で格安で副業にしている人もいる。 「プロの落語家に弟子入りしていない人はプロではない」と、いわゆるプロの側から主張したとしても強制力はない。別に免許が必要なわけではないのだから。 もともとこうなって行ってしまった原因のひとつは、立川流Bコース(芸能人)と、Cコース(アマチュア)を作ったことだと談之助は語る。今やカルチォーセンターでは落語を教えてお金を貰う落語家もたくさんいて、どんどん落語をやる人が増えている。 「落語家になるには寄席の楽屋に入って修業が必要」というのも、立川流、円楽一門という寄席に出ない団体が存在するようになって、楽屋修行してない志の輔、談春の登場もあり、あまり意味がないことが証明されてしまったようなもの。 つまり突き詰めてしまうと、こんなにプロとアマの差が無くなってしまったのは立川流のせいとも言えるわけだ。 談之助に言わせるとアマの人でも、トップクラスの実力は無理としても、ちょっと真剣に取り組めば現在中間クラスの落語家くらいのレベルにはなれると言う。むしろ天狗連より下手な落語家はたくさんいるとのこと。 そんな時代、これからどうなるのか。「それがプロの見せどころじゃないですかね」と談之助は結んだ。 11月9日記 静かなお喋り 11月8日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |