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客席放浪記

第17回禁演落語を聞く会

2017年8月31日
なかの芸能小劇場

 開口一番前座さんは、立川淡州『子ほめ』。淡州と書いてダンスと読むらしい。なぜこういう名前かというと、Hip Hop のダンスが得意だそうで、上半身だけのダンスを披露してくれた。Hip Hop を「シップホップ」と言って、伝わりにくいと思ったのか「ヒップホップ」と言い直すところが面白い。変わり種の前座さん増えてきた。前座修行頑張ってね。

 立川談之助、今日は自ら『三助の遊び』と『つるつる』をネタ出ししていたが、二席ネタ下しは間に合わなかったようで、『三助の遊び』は次回以降に延ばし、今日の一席目は、私は以前二回談之助から聴いた『とんちき』。面白いマクラが30分ほどあって、それから『とんちき』。おそらく今、この噺をやるのは談之助しかいないだろう。大雨で誰も行かないだろうから行けばモテるだろうだろうと、廓に行った、ふたりの落語家の噺。基の噺を発展させて、実在の落語家ふたりをモデルにして作り込んである。落語好きは思わずニヤリ。

 ゲストは橘ノ圓満『三人片輪』はさすがにやる人は少なかろう。何しろ寄席じゃあできない。せむしの若旦那をダシにして、廓に遊びに行こうとするふたりの男。せむしじゃモテないからと渋る若旦那のために、ひとりは梅干しを顔に張り付けてかさかきを装い、ひとりは唖のふりをする。ほうら、今では片輪も唖も漢字変換できない。今では片輪ではなく身体障害者と言うのだろう。私ももう少しで唖の仲間入りになるところだった。唖は今は発話障害と言うらしい。まああまり気持ちよく聞ける噺ではないわな。

 仲入り後、圓満の師匠で三年前に亡くなった橘ノ圓について談之助が聴き手になっての対談。私は橘ノ圓って漫談くらいしか聴いてないかもしれない。立川談志とも仲がよかったそうだが、そういうところも似ていて(談志も昔、寄席に出ていた時は漫談だけで終わってしまったことが多かった)、気が合ったのかもしれない。ほら吹きで、どこかいたずら心のある人だったようだが、あのどこか惚けた漫談は面白かった。

 談之助のトリの噺は『つるつる』。言わずと知れた先代桂文楽の十八番。これも今はやる人がほとんどいないだろう。私は中学生のときに文楽の『つるつる』をホール落語で聴いているが、なんだが今いちピンと来なかった。「なんだこれ」という感じ。文楽は幇間の噺が多かったという印象があるが、『鰻の幇間』や『愛宕山』に比べると、中学生の私には印象に残らなかった。後に録音物で聴き直して、これは面白いと思ったが、これは文楽以外の人には、これ以上のものはできないだろうという気がした。談之助はうまく文楽の呼吸を再現してくれたが、残念ながら上手くコピーしたという以上のものは無かった。それくらい難しい噺で、あくまで文楽だから成立した噺なのかもしれない。

9月1日記

静かなお喋り 8月31日

静かなお喋り

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