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客席放浪記

月影番外地 その5 どどめ雪

2016年12月4日
下北沢 ザ・スズナリ

 四姉妹の物語で、『細雪(ささめゆき)』ならぬ『どどめ雪』。四姉妹の配役が濃い。長女鶴子がナイロン100℃の峯村リエ。次女幸子に月影番外地のプロデューサーでもある劇団☆新感線の高田聖子。三女雪子に内田慈。四女妙子に藤田記子。高田聖子の月影十番勝負→月影番外地は、これまで観たり観なかったり。今回観に行こうと思ったのは内田慈(ちか)が出るのが最大のポイントだったかな。

 四姉妹の話というと、私には『細雪』よりも、マンガと、その後映画になった『海街Diary』の方がピンとくる。『どどめ雪』四姉妹も『海街Diary』四姉妹と同じで両親がいない(死に別れたのか?)。さらに地方都市の古い家に住んでいるのも同じ。違うのは次女幸子は結婚していて、夫(利重剛)も四姉妹と一緒に暮らしている。

 そんな一家に三女の雪子がフィアンセ(田村健太郎)を連れてきていて、六人が一緒にテーブルを囲んでスパゲティを食べているところから舞台は始まる。茹でたスパゲティが鍋に入っていて、家族はそれを箸で挟んで自分の皿に乗せ、スープのようなものをかけてズルズルと啜り込む。なんとも大雑把な料理。うどんを食べているのかと思った。みんな平然と食べているが、さすがにフィアンセの男は気が退けて手が出ない。こんな場所に連れてこられて一緒になってカガツガツ食える男は相当度胸が座っているやつしかいないだろう。

 この家がどのくらいの広さなのかはわからないが、どうやら雪子はこの家を出る気はなさそうで、フィアンセもこの家に住まわせる気でいるらしい。いやいや、これはフィアンセにしたら恐怖でしょうよ。なぜみんなが一緒に生活しているのかというと、事情がだんだんわかってくる。四女が何か過去に問題を起こしたらしく(最後の方まで何があったのか語られない)、賠償金を五千万円だか払わなければならず、余分な金を使えないらしい。だから次女の結婚相手の収入の一部も賠償金に回される。その割に働こうとしない家族もいるのだが・・・。このままでは三女のフィアンセの稼いだ分も、ほとんど持って行かれそうだから、普通の神経じゃ三女雪子との結婚は躊躇しそう。いやいや、それどころかこんな濃い姉妹が一緒に住むんじゃ足が竦んでしまうし、耐えられそうにないだろう。なんたって、この四姉妹『細雪』の清楚なイメージではなく、その名の通り、どどめ色のがさつなイメージ。どちらにしても私なんかタジタジ。『海街Diary』あたりだと、『細雪』と『どどめ雪』の中間的で、男の私が観ても「いいなぁ」って思ってしまったりするのだけど。・・・でも女ばかり四姉妹のなかには、足が竦んでしまって入っていけないだろうな。

 女性って強いと思う。先日観たアニメ『この世界の片隅に』でもそうだけれど、昔の日本の女性って、相手の家に縁あって嫁いで行って、義父、義母、ときに義兄弟、義姉妹、義祖父、義祖母と一緒に生活していたわけで、そういう大家族制の時代たったとはいえ、凄いことだと思う。

 四姉妹のうち、ひとりに焦点を合わせた物語ではなく、四人およびふたりの男の物語だが、一応、次女の高田聖子のモノローグで物語は終わる。

 先週観た『サンバイザー兄弟』なんかは、単純でバカな男の話。そこへいくと女性はいろいろあって、その生き方はタイヘンだなと思う。

12月5日記

静かなお喋り 12月4日

静かなお喋り

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