ドージン落語会 2013年9月8日 らくごカフェ 萌え系新作落語と古典の会。DVD収録がある。 落語 瀧川鯉朝の『処方箋』は、大阪の彦八まつりのことをマクラにしてから入る。これは不思議な面白さ。なにしろ起承転結のような物語の流れのようなものがない。コミケ(コミックマーケット)の開場を待つ青年ふたりの、取り留めないといえば取り留めない会話だけで成立している噺。これがつまらないかと言うと、妙に面白いから落語ってストーリーじゃないんだな。コミケ好きの人って、ようするに妄想世界が入ってしまっているようなところがあるのかもしれない。会話しているふたりのうちの一人が、突然、女性との恋愛妄想作り話に入ってしまうところなど、落語でいう“ひとり気ちがい”。『野ざらし』とか『湯屋番』なんだが、あの浮かれた感じより、よっぽどリアルで真剣だったりする。 柳家一琴の『男の娘』の方が物語らしく出来ている。コスプレ好きの女の子が若くして死んでしまう。自分の作ったコスプレ衣装を着れないまま死んでしまった事に未練があって成仏できない。それである男性に憑りつく。自分の代わりに衣装を着せてイベントに出させようとするのだ。ボチャとした一琴がやると笑いが増幅する。セクシーな衣装を着て、雌豹のポーズをさせられたりの姿がとにかく可笑しい。本当は、女性のような華奢な体型の男に憑りつく噺なのかもしれないが、これを一琴がやったのが成功の鍵だったと思う。 らくごカフェは舞台袖がすぐのところにあり、仲入り後はその舞台袖から聞こえてくるふたりの茶番劇から始まる。ふたりとも飛ばしてるなぁ。 後半は古典。柳家一琴は『勘定板』なのだが、私はこんな可笑しな『勘定板』は初めて。あまり好きな噺ではなかったのだが、この噺って、こんなに面白かったっけ。客席からもドッと笑いが来ていたから、これは私だけ受けていたのではないだろう。汚いだけの噺という概念を打ち破っていると言える。これなら何回でも聴きたい。DVDには収録しないそうだが。 瀧川鯉朝の方は『崇徳院』。DVD向けのイタズラのようなマクラが可笑しいのだが、噺に入ってこれまたびっくり。『崇徳院』は年中いろんな人のものを耳にすることになるが、これはタダモノではない。鯉朝にかかると、この聞き飽きた噺が大変身していて、新鮮に聴ける。流れるような語り口とは違ってゴツゴツしている。誰もが話す笑いの部分も鯉朝には飛躍した部分が見られる。それにさらにオリジナルのギャグもたくさん入れてくる。これは凄いや。「瀬をはやみ・・・」の歌も、間違って憶えた熊さんにかかると「せみくじら 岩にもたれて 昼寝する」になってしまう。このバカバカしさったらない。 萌え系新作落語も面白かったし、古典もやりようによって、こんなに面白くなるんだと感じた会。落語の可能性ってまだまだ広がっている。 9月9日記 静かなお喋り 9月8日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |