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客席放浪記

Shinobu's Brain In The Soup Bomb
Drug Store


2013年1月10日
吉祥寺シアター

 坂上忍、作・演出によるプロジェクトの公演。もう13回だそうだが、観るのは初めて。

 坂上忍という役者はなんとなく気になっていた。私は無頼な人間に憧れるようなところがあって、特にギャンブル好きな人には興味を持ってしまう。それは自分がギャンブルにどうしても、のめり込むが出来ないくせに、自分の人生を一か八かで勝負できる人をうらやましく感じる事から来るらしい。坂上忍が年末にその年に稼いだ金をすべてギャンブルで勝負するという逸話を聞いてから、俄然興味を感じているのだ。そういう人が作る芝居ってどんなものなのだろうかと興味があった。チラシには坂上がAB型の双子座とある。私と同じW二重人格。よくわけのわからないところがある人物であることは確かなようだ。

 開演時間の五分前に入ったら薄暗くなって、ビデオの上映が始まってしまった。なんと今回の稽古風景が映っている。坂上忍が演出を付けているのだが、それこそ役者たちはボロクソに言われている。なんでこんな映像を流すかなぁと、少々不快になる。人が怒鳴られている姿は決して気分のいいものではない。例えば飲食店でも商店でもいいが、そこに入って店員さんが店長さんに怒られているシーンを目撃したら、嫌な気持ちになって、食欲も購買意欲も無くなってしまうだろう。それをなんでわざわざこんな映像をと思っているうちにビデオは終わり、本編が始まった。

 舞台の照明は終始暗い。どこかの広い空間。三人一組になった様々な七組のチームがいる。ここで、永遠の命を与えられるドラッグが、最終的に勝ち残った一組に与えられるという設定。各チームは闘いを開始するが、男だけのチームとか女だけのチーム、あるいは混合のチームもある。生き残った者の勝ちとなるバトルロワイヤル方式ともなると、当然今のチームにいるより、別のチームにいる強い奴と組む裏取引が横行することになってしまう。

 終盤になり、そこにもう一チーム加わることになるあたりから、「ははあ、そう持ってきたか」と思う。不死の薬というテーマから当然そういう展開にならざるを得ないだろう。しかしそれにしては、最後の一チームは反則な展開だよなぁと思っていると、どんどん感動作の様相を呈し始める。

 だとしたら嫌だなぁと思っているとエンディング。TMネットワークの木根尚登が、嘘っぽい愛の歌(台詞でもそう言ってる)を歌い出し、全員が合唱し始めたところで、照明が消されてしまう。そんなエンディングにはさせないぞという坂上忍の演出らしい。ほほう。

 「生きるって何?」という問いに、劇中「しんどくて、ちょっとうれしい」という台詞がある。言い得て妙だなと思い、これが結論かなというところでフィナーレ。出演者一同が躍る中で、坂上が出てきて中央で踊り始める。って、坂上だけ踊れてないじゃん。どうも最初の稽古風景のビデオは冗談だったことがわかるこのラスト。ホント、坂上忍という人物は何考えているのかわからない。

 さらにフィナーレ後にもビデオ。「生きるって何ですか?」との質問に、坂上が「解らない。だから働いてるんじゃない?」とうそぶいて去っていく。ますますこの人が解らなくなってきた。

1月11日記

静かなお喋り 1月10日

静かなお喋り

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