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客席放浪記

2012年10月20日エッグ(東京芸術劇場プレイハウス)

 野田地図第17回公演。
 なんだか薄ぼんやりと見えていた舞台装置が、妙に雑然とした舞台装置だなと思ったら、芝居が始まると、野田秀樹演ずる劇場案内係が女学生を引き連れながら「東京芸術劇場、改装間に合いませんでしたー」と叫び、大笑い。この舞台上に散乱した建築資材のようなものが、実は立てていくと、ロッカーになっていて、それがズラッと並ぶところは息を飲んだ。

 『エッグ』とはスポーツ競技のひとつなのだが、果たしてどんな競技なのかはイマイチ掴めない。どうやら六人くらいでチームを作る団体戦らしい。その選手に、妻夫木聡、中村トオル、大倉孝二ら。チームのオーナーが秋津奈津子。チーム監督に橋爪功。これに絡むロック歌手役に深津絵里。そのスタイリストに藤井隆。そして芝居全体を握る役に野田秀樹。って、凄く濃い役者ばかり集めたもんだという印象。

 芝居は、寺山修司の未発表戯曲を発見した野田秀樹が、その戯曲を元にして再構成しようという話。もちろん、実際には寺山にそんな戯曲は無い。

 野田秀樹はあいかわらず舞台を走り回る。早変わりも多い。夢の遊眠社時代から、まったく体力は衰えていないかのよう。あのころはガキ大将のように役者を引き連れて、舞台中を走り回っていた。それが、いまだにそのときの運動量に匹敵しそうな動きをする。

 話は二転三転して行くが、卵を使った競技が具体的にどう展開するスポーツなのかはよくわからない。なにやら、卵の黄身と白身を針一本で、卵の殻を割ることなく分離させて取り出すということはわかるのだが、それがどうしてスポーツと結びつき、怪我人が続出するハードな闘いなのかはよくわからない。まあ、おそらくそんなことはどうだっていいんだろうが。

 途中、野田が寺山の台本を読み違えていたと、1964年の東京オリンピックの話が戦前に飛んだり、選手たちが実は全員女だったりと、設定がコロコロ変わっていく。なんだかよくわからないのだが、このよくわからなさも、野田らしい。

 なんといってもロック歌手役の深津絵里がいい。音楽を椎名林檎が担当しているが、深津絵里の役名が苺イチエとくる。野田秀樹の作詞を椎名林檎が曲を付け、それを深津絵里が歌うのだが、これがいい曲が多くて、舞台が終わっても頭の中で、これらの曲が鳴っている。編曲もいいのだと思う。これまで椎名林檎及び東京事変の音楽をあまり好きではなかったのだが、これは別。帰りにサントラCDを買ってしまった。

10月22日記

静かなお喋り 10月20日

静かなお喋り

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