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客席放浪記

2012年2月11日『圓朝座 第七次 第壱回』(お江戸日本橋亭)

 開口一番は三遊亭玉々丈。「NHKで若手落語家を六人集めて落語を演ってくれという仕事がありまして、収録した中から二人がオンエアされるんですが、私は最後から二番目。座布団の位置がどうもマイクに近すぎる。自分の番が終わった後、座布団をマイクからちょっと遠ざけるように直したんです。そうしたら最後に出た人に怒られまして。どうも固定カメラがあったらしいんですね。その人が一部しか映らなくなってしまったらしくて」 ネタは『権助魚』

 いよいよ鈴々舎馬桜『怪談牡丹灯籠』が十二回の予定で始まる。この長い噺、いろいろな人が通し、という名目で挑戦しているが、キッチリ演る人はほとんどいない。キッチリ演ろうとすると、それこそ十数回に分けなければならない。それをやろう、そしてそれに付き合おうという時間に余裕のある人は現代では少ないのが実状だ。それでもなんとか全体像が解るような構成で一回で演ってくれた落語家が何人か現れ、この膨大な噺の構成は私も解ってきた。何回行かれるか不明だけれど、行かれる限り三年計画に付き合ってみたい。
 今回はその『発端』。本郷三丁目の刀屋で無銘ではあるが業物の刀を吟味していた飯島平太郎。外で中間の藤助が酔っ払った黒川孝蔵に因縁をつけられる。仲裁に入った平太郎に黒川が痰を吐きつけたことから話がこじれ、手にあった刀で止むなく黒川を斬り殺してしまう。これが『牡丹灯籠』の大元になる出来事。
 数十年後、本来はサイドストーリーであるお露、新三郎の物語が始まる。ふたりが知り合ったあと、新三郎がお露の住む柳島の近くまで伴蔵と釣りに行く。そこで新三郎は夢をみることになるのだが。この挿話はエロチックでもあり、夢でしかなかったはずの香箱の蓋が残っていると言う怖さがありで、いいところ。
 ここまでで約一時間。本日はここまで。

 仲入り後は三遊亭白鳥『敵討札所の霊験・下 みたいなもの』。「みたいなもの」が入っているように、三遊亭圓朝の『敵討札所の霊験』を現代に置き換えて作り直したもの。前回の上に続いて今回は下。この噺を最後まで演ったのは、鈴々舎馬桜、五街道雲助に次いで三人目なんだそうだが、これ本当に『敵討札所の霊験』なの?
 前回のあらすじを軽く説明したあと、下が始まる。もともとの噺を知らないので、白鳥がどこまで元の噺を残しているのかわからない。
 日大芸術学部児童文学研究会のコンパで、女性問題のこじれで部長を殺してしまったタメゾウ。捜査の手を逃れて姿をくらましてしまう。当の原因になったヒロイン、ミキはゼミの先生飯山と結婚。地方の分校に赴任するが苦労が絶えない。ミキは畑仕事を始めるのだが。
 噺が二転三転していく中で、上で仕込んでおいた指輪や、消えた特殊メイク道具などが、うまく効いてくる。
 下だけでも一時間かかった。おそらく上もそのくらいあっただろう。この大作に挑んだ白鳥の意気込みに脱帽。面白いんだもん、白鳥版。

2月12日記

静かなお喋り 2月11日

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