円丈、芸道50年記念 新作祭 2015年2月18日 日本橋劇場 新作落語に革命をもたらした三遊亭円丈。円丈がいなかったら今の新作の活況はなかったと言っていい。その円丈も70歳。さすがに衰えは見られるが、まだ新しいものに挑戦しようとする姿勢はすはらしい。 古今亭駒次は、飲食店で見ず知らずの他人同士の会話を聞くのが好きだというマクラから、喫茶店に集まって、コーヒー一杯で、ぺちゃくちゃお喋りをしていく女性たちの噺。『ガールトーク』というタイトルだが、出てくるのは家庭の主婦。いわゆるトウの立った女子会。その場にいない人の陰口を叩くのが目的。他人の不幸は蜜の味ってやつ。うん、聞こえてきちゃうよね、こういうの。知らない人たちの会話だと「いやな話してるな」と思うけれど、仲間同士で話すときに嫌な共通の知人の不幸話って盛り上がることあるよなぁ。 昇太、白鳥が、円丈を向かえてのトークコーナー。昇太が円丈に「自分が好きですか?」と問いかけていたのは、自分好きの昇太らしい質問。円丈は「好きだと思う時もある」と答えながら、やっぱり「好きじゃない」との結論。このへんもその人の落語に現れているのかもしれない。 円丈の弟子、三遊亭白鳥は入門当時の師匠のことをマクラで語り『スーパー寿限無』。かつて円丈が演った『新寿限無』を超えようと作った噺。化学用語を使った円丈版と、ダジャレにこだわった白鳥版、どちらも甲乙つけがたいんだよなぁ。 三遊亭円丈は、その白鳥の作った『シンデレラ伝説』を。白鳥のオリジナルをほぼ残しつつ、すべての童話は『桃太郎』になるという展開に持って行く。さすが新作落語の革命児。ただでは終わらせない。 春風亭昇太の『遠い記憶』は、小学生のころモテモテだった男が故郷の同窓会に出席する。小学生時代にみんなが書いた文集があり、そこにはみんなが将来何になりたいかが書かれていた。町長になりたい、プロ野球選手になりたい、パイロットになりたい。みんな実現不可能なことを書いているとバカにしていた男だが、それがことごとく実現してしまっていたことにショックを受ける。これは駒次の『ガールトーク』にも通じるものだが、こっちの方は他人の不幸は蜜の味と思ったら、自分が一番不幸立ったという裏返しのような噺。昇太の皮肉の方が一段上かも。 三遊亭円丈のトリの噺は、7〜8年前に何回か演って、その後パッタリと演らなくなっていたという『寄席沈没』。各地の寄席の床にブラックホールが出来て、すべて消えて行ってしまうという噺。その真相はアッと驚くもの。落語好きの人なら大爆笑ですね。 2月19日記 静かなお喋り 2月18日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |