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客席放浪記

円丈最後の十番勝負〜新作対決〜

2013年11月13日
日本橋劇場

 新作対決ということで、開口一番の前座さん、三遊亭わん丈も自作の新作『プロポーズ』。28歳の青年が60歳差の88歳のおばあちゃんにプロポーズする噺。ありえないよなぁと思うけれど、それが落語。語り口がうまいし、これからが楽しみ。

 柳家喬太郎、三遊亭円丈のオープニングトーク。ほとんど円丈が新しく書いた本『落語家の通信簿』の話。これ、読まなくちゃ。

 名古屋出身の三遊亭円丈が円生に入門を願いに師匠宅を訪れた際に、「師匠おるきゃー。わしを弟子にしてちょ」と言ったという噂がまことしやかに流れているがこれは嘘だと笑わせて『手紙無筆USA』
 もう随分前からかけている噺だが、古典の『手紙無筆』を英語が読めない男という設定に変えたという着眼点は、やはり大したもの。
 I have a desk のhaveは蛇のハブだとして、ハブが机を持っていると訳すなんていうギャグはどこから出てきたのだろうか? 蛇が机を咥えている様がイメージとして思い浮かんで、笑いが込み上げてくる。ハブは思いついても、それに机をくっ付けるセンスは凄い。

 柳家喬太郎は、食材偽装の話題をマクラに持ってくる。「あれって例えば、小三治がトリだっていうのに行ってみたら私だったとかって事ですかね。あるいは海老蔵が出るというので行ってみたらバナメイ海老蔵だったって事ですか?」
 と、歌舞伎の話題が出たところで『カマ手本忠臣蔵』。浅野内匠頭始め、赤穂の浪士が全てオカマだったらというアイデアの噺。義だの忠ではなく愛に生きたという、バカバカしいといえばそれまでのパロディ。喬太郎のオカマ演技がテレずにずーっと続くのが見事。

 仲入り後は、三遊亭円丈ネタおろしの新作『悪人β』。13年間引き籠り生活をしていた男が、ようやく社会復帰しようとする。今の自分に何ができるかとインターネット検索をしているうちに、悪党になろうと決心する。すると悪党になるための学校がある。この飛躍さ加減が尋常ではない。円丈という人の発想は、凄いとしか言いようがない。
 この先は、ある古典落語を絡めてあるのだが、それはネタバレになるので書かないでおこう。タイトルにβと付いているが、まだネタを練っている途中だそうで、完成系はβが取れて『悪党』になるらしい。

11月14日記

静かなお喋り 11月13日

静かなお喋り

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