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客席放浪記

〜六代目三遊亭円楽プロデュース〜
六代目三遊亭圓生三十七回忌・五代目三遊亭圓楽七回忌追善落語会
圓生ファンの仲間による各派の会『待ってました!!柏木』圓生十八番集


2015年9月3日
よみうりホール

 当代円楽はプロデュースの才能がある人で、毎年行われている、博多天神落語祭を成功させるなど、その顔の広さはたいしたもの。今回も圓生、円楽のW追善興行という形で、落語協会、落語芸術協会、立川流、上方落語協会、そして円楽党の自分という各派代表を出してもらっての落語会を立ち上げた。

 まずは円楽が、あとの出演者四人(歌丸、ざこば、小朝、志の輔)にインタビューの形で、圓生の想い出を語ってもらうコーナー。なにしろ全員、圓生といったら雲の上の存在。想い出といっても、畏れ多いものしかない。歌丸は楽屋で圓生が、歌丸を前に呼んで喉の調子を整えるために『慶安太平記』を語ってみせたというエピソード。小朝は前座時代に地方で圓生と一緒になって緊張していたら、突然「沖田総司は、毎朝起きると掃除をしたのかね?」とシャレを言われたというエピソード。ざこばは楽屋で、圓生、文楽、小さんと一緒になり、一刻も早く逃げ出したかったというエピソード。志の輔は圓生には直接会ったことは無いが、高校の落語教室に来てくれたというエピソード。なにしろ昭和の名人ですもの、近寄りがたいオーラがあったんでしょう。

 立川志の輔は、熊さんと知ったかぶりの隠居の会話が続く。エイはどこまでがヒレなのか。ライオンはなぜあんなに頭が大きいのか。お得意の『バールのようなもの』の出だしを思わせるが、今日は圓生十八番集。ここから『やかん』に繋げた。なるほど『やかん』か。この噺、登場人物がふたりだけということもあって、今では前座もよくかけているが、そういえば圓生もやっていた。あの隠居の知ったかぶり面が圓生が演ると、実に憎ったらしくて面白かったんだよなぁ。

 桂ざこば『肝潰し』。なるほど、これは圓生十八番だ。あまりかける人がいないのは、あまり気持ちいい噺ではないからだろう。笑いはほとんどないしね。え〜と、私は最近では誰で聴いただろう? 円弥で聴いたことはあるぞ。あっ、圓生の弟子だ。そうか、円弥ももう随分前に亡くなっているんだった。

 入退院を繰り返している桂歌丸が板付き、前に見台、膝隠しを置いて登場。膝を悪くして正座ができないらしい。しかし声は張りがあってよく通る。演じるは『紺屋高尾』。圓生はこの手の人情噺、得意だったよなぁ。それに圓生という人は、女の色気を出すのが上手かった人。歌丸も悪くないのだけれど、やや高尾花魁の色気が弱い気がするのと、久蔵に若者らしさがない。序盤で高尾に恋焦がれて仕事に手が付かないという部分をスットしてしまったのも痛いかなぁ。

 21時には完全撤収とかで、三遊亭円楽は短めの噺『町内の若い衆』。はて、圓生って、このネタを十八番にしていただろうか? 少なくとも私はこの噺を圓生で聴いたことはないぞ。しかし口の上手い当代の円楽には打って付けの噺かも。

 トリは春風亭小朝。小朝がトリで何を持ってくるか、興味がある。照明が落とされた。とすると、この手の十八番は『死神』だろうと思っていたら、『真景累ヶ淵 豊志賀の死』。そうか、そういえば、累も演っていたっけな。これはよくも悪くも小朝調。客電も舞台照明も落としてムードを作っているのに、脱線して笑い話が入る。人によって好みもあるだろうけれど、ここは怪談噺に徹して、ビシッと決めて欲しかったなあ。

9月4日記

静かなお喋り 9月3日

静かなお喋り

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