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客席放浪記

2012年2月24日第六回奮闘馬石の会(池袋演芸場)

 開口一番、金原亭駒松『たらちね』。ネギを売りに来た八百屋まで。「これじゃ芝居だよ」で下げた。頑張ってね。

 「きょうの二席は、最後まで演るということで並べてみました」と隅田川馬石。「しかし、惜しかったですねえ、駒松さんの『たらちね』。最後まで縛りだから、最後まで演ってもらおうと思ったんですが、あそこまでしか習ってないんですって。あとちょっとだったんですが・・・あと二分で最後まで行ったのに」。
 最後まで演る『鮑のし』。そういえば寄席ではこの噺、最後の部分はカットされることが多い。時間の問題もあるが、今ではもう解りにくいというのが、その理由なんだろうか? ともあれ、最後まで行かないと演題の意味が解らない。
 さてさて『鮑のし』といえば、3.11以来の禁句部分。馬石はどうするかと注目していたら、甚兵衛さんと大家さんの会話の中で、うまくかわしていた。 無理に入れなければいけない笑いの部分ではないだろうから、こういう自然な持って行き方も、アリだなと思う。
 立ち上がって踊り、『深川』。

 仲入り後、隅田川馬石『宮戸川(通し)』。こちらも寄席でよくかけられているものの、そのあとが長いのと暗いので、演じ手ほとんどもいない。最近では柳家喬太郎が演るのと、五街道雲助が以前から演っているらしい。この噺も後半まで行かないと演題の意味がわからない。
 馬石版はおそらく、師匠の雲助ゆずりなのだろう。クライマックスで芝居噺となる趣向。
 前半と後半が、ガラリと様変わりしてしまうのを避けた演出のような気がしたのは、前半も極力笑いの要素を意識的と思える感じで押さえていたからだ。半七、お花の様子に、ふたりの家の事情も織り込まれる。霊岸島のおじさんのところもサラリと。
 後半、自然にスッと入って、半七が聞かされる辛い話。喬太郎版の生々しさはここにはあまり無い。船にたまたま乗り合わせた男の話す自慢話のようなものを静かに聴いていた半七が、「これで様子がカラリと知れた!」 の一言で、お囃子が入り、たちまち芝居噺に。
 サゲの部分に入って、静かな余韻と共に噺が終わる。

 終演20時15分。

2月26日記

静かなお喋り 2月24日

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