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客席放浪記

2012年10月9日月例三三(イイノホール)

 開口一番は、立川こはる『権助魚』。談春の弟子で、この六月に二ツ目に昇進したばかり。談春の弟子は五年以内に、二ツ目昇進を認められないと破門なんだそうだとか。よかったね。女流というハンデながら、よく健闘していると思う。

 「二ツ目に昇進するのは、真打に昇進するときよりもうれしい」のだと柳家三三。「真打披露興行のときに、縁起をかついで『寿現無』『松竹梅』『一目上がり』を開口一番にする前座がいたりすると、『よく出来た前座だ』ということになる。中には『短命』を演るやつがいたりして」と、これもまた「お客さんがぞろぞろ」と目出度い噺『ぞろぞろ』へ。草鞋がいくつでも、ぞろぞろ出てくる話だから目出度い。おじいさん、草履が出てくるのを見て「見たか(三鷹)い」。おばあさんが「次は吉祥寺」。

 「高校のゼミで落語の解説を頼まれまして、なんとテーマが廓話の『明烏』。先代桂文楽の『明烏』を観て、質疑応答。どんな質問が出るかわからないので、当時の廓について調べて理論武装していったら、質問されたのが「甘納豆ってなんですか?」 今の人、甘納豆知らないのかねぇ? 二席目は『引っ越しの夢』

 仲入り後は、スッと『井戸の茶碗』へ。40分の熱演。人間、正直に生きるのが一番ではあるのだが、真っ正直なのも困りものという一席。それでも、最後は丸く収まるのだから、これはたまたま上手くいった例。千代田卜斎が高木佐久左衛門に渡した茶碗が、たまたま目利きの目に触れたという偶然があって成立した噺。ご都合といえばご都合なんだけど。まあ、いいのかもね。こういう爽やかな噺も。圓朝だったら絶対に書かなかったろうなあ。

10月10日記

静かなお喋り 10月9日

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