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客席放浪記

「ごらく亭」の夏休み3 夜の部

2014年8月31日
北沢タウンホール

 レギュラーになっていた松永玲子が今年は別の仕事(青山劇場『ガラスの仮面』)のために出られず、ピンチヒッターの女性枠として出た形になったのがオオタスセリ。いつもはひとりコントのようなことをやっている人。私も一度だけ観たことがある。『ストーカーと呼ばないで』という知る人ぞ知る名曲を歌う人としても知られている。ひょっとすると落語は初めてなのかもしれない。自作コントを落語に変えてきた。『蝋燭』『カウンセリング』。やはりひとりコントのモロ師岡が落語をやるように、ひとりコントの人は落語と共通するものがあるのかもしれない。特に『カウンセリング』は面白かったなぁ。サゲも落語っぽいし。

 曽世海司の落語は毎年ここで聴くことになるが、ああ、役者さんの落語だなという感じがする。今年の『禁酒番屋』も出てくる人物が、いかにも演技しているという感じ。こういうの新鮮で好き。

 山口良一大森ヒロシの漫才。この人たちも毎年のことながら感心する。物凄い早口の漫才。台本、段取りもたいへんだろうけど、よく躓かないで最後まで駆け抜けられるものだ。プロの漫才師だって、こんなにスピードのある漫才を出来るコンビは少ないだろう。

 松尾貴史『看板のピン』。この人の落語に関しては、もう凄すぎて素人の域ではなくなってる。古典落語って、同じ噺を演者によって聴き変えて楽しむもの。その人の個性がつまらないと、その落語もつまらなくなってしまう。この人のは、同じ噺を同じようにやって、それでも面白いと感じるのだから、やはりもう素人の芸ではないんだなぁ。

 恒例のお座敷芝居。今年は『天失気』。これを「のまたり」に変え、登場人物を増やして作り直してある。小宮孝泰が小坊主で、いわば狂言回しのツッコミ役。あとの人たちはボケに徹するのだが、ここでも松尾貴史の弾けっぷりが凄い。松竹新喜劇のようなアドリブで引っ掻き回す。小宮孝泰も、それを受けるのにたいへん(笑)。

 自分から名乗りを上げて出演したというラサール石井『錦の袈裟』。以前は上方落語をやっていた記憶があるのだが、今日は江戸落語になっていた。器用な人だなぁ。それに格段に上手くなってる。

 あかつの相撲形態模写。この人の身体をこれだけ近くで観たのは初めて。ちゃんと相撲取りの体型をしている。単なるデブではなさそう。案外、トレーニングしているのかもしれない。

 トリは小宮孝泰。出身地が小田原ということで稽古し始めた『抜け雀』だが、マクラの部分を一部カットし、整理しなおして、ずっと良くなった。これはおそらく噺に入ってからの部分に自信が付いてきた表れかもしれない。過去2〜3回聴いているが、今日の出来はダントツによかった。ここは昇太が入っているなとか、ここは喬太郎だなという楽しみ方をしたが、今回は、いかにもここは小宮孝泰だという宿屋の主人が勝っていた。腕を上げてる。ここ数年で、とうとうこの噺をしっかり自分の物にしたなと、うれしくなってしまった。

9月1日記

静かなお喋り 8月31日

静かなお喋り

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