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客席放浪記

「ごらく亭」スペシャル 夜の部

2015年9月19日
烏山市民会館ホール

 チケット発売日に取っておいてよかった。どうも即日完売だったらしい。それもそのはずで、今回は坂崎幸之助がギター漫談で出る。客席もいつもとは明らかに客層が違う。どうも The Alfee のファンの女性が多く詰めかけたらしい。しかも昼夜興行の昼夜両方観るという人たちが多いらしい。The Alfee といえば武道館公演をしているほどの人気。400席規模の[烏山市民会館ホール]に坂崎幸之助が出るとなれば、即日完売もうなずける。

 マエセツを小宮孝泰がやったあと、「では開口一番はこの人です」と言って出演者の名前も告げずに、開口一番というメクリをかえしただけで舞台袖に消えた。「桂りょうばと申します」と言って顔を上げたのは前田一知。桂ざこばに弟子入りしたというのは、まだ耳新しい。アマ時代の高座を何回か観ているし、ごらく亭でも常連。そのころからもうプロと言ってもおかしくない腕前だった。ほとんどのお客さんが「何者だろう」と思っただろうが、この人、亡くなった桂枝雀の息子。
 もちろん、りょうばはそんなことを口に出すこともなく、自分は坂崎幸之助のファンで、以前、坂崎に一目逢いたくて、大阪からわざわざ東京の東武亀戸線東あずまにある、坂崎の実家、坂崎商店まで来た事があるというエピソードを語り、The Alfee のファンに大受け。
 長めのマクラで笑いを取って、短く『平林』。これも大きな笑いを取る。普段落語を聴きなれていないお客さん相手とはいえ、やはり実力のある人だ。

 『ストーカーと呼ばないで』のオオタスセリ。普段はひとりコント用で演っている『OL日記・待ち合わせ』を落語にスライドさせたものを演った。持ち時間のうち自己紹介を兼ねたマクラが長引いて、残り持ち時間6分。もともと30分くらいあるものだそうだが、それを6分に短縮。お局先輩OLとの待ち合わせに遅れたOLの噺。ひとりコントが落語に転化しきれてないという気がしないではないが、これは今の女性が上手く描かれていて面白い。オチもジコチュー怪物女性の唖然とするようなもので、これに近い人って確かにいるよなと、大笑いした。

 松尾貴史『鷺取り』。毎度のことながら、この人の落語はとてもアマチュアなんていう域ではない。そのまま誰かに弟子入りして名前を貰えば、十分に落語家として通用する。しかも、ほとんどの落語家は太刀打ちできないだろう。

 山口良一大森ヒロシの漫才。この人たちも毎回出ているがプロの漫才師顔負けの凄くスピーディーな漫才をやる。今回は高校生時代に戻って、好きだった一年上の女性に告白するというネタ。こういうのネタも The Alfee ファンの女性にはドンピシャだったらしく、かなり受けていた。

 曽世海司、今年は『明烏』。若旦那が連れていかれたところが吉原だと知って、しかも逃げられないとなると泣き出してしまうあたりを、曽世が演ると妙に可笑しい。「あれ、嗚咽ってんだろ。読めるけど書けない」と言う源兵衛と多助。このふたりの間が、落語というよりは芝居の間という感じがして新鮮。

 仲入り後に、お座敷芝居『天狗裁き』。この演目はすでに何回も演っているが、今回はさらにグレードアップ。小宮が面白い夢を見たとされてしまう男として登場するが、相手として出てくる、女房、隣家の男、大家、奉行、天狗にそれぞれツッコミを入れるのは、ほとんどアドリブ。このアドリブに焦る相手のリアクションが楽しい。最後は出演者全員プラススタッフまで舞台に登場という賑やかさ。

 坂崎幸之助のギター漫談。素人のフォーク・シンガーにありがちな失敗を実演してみせる。チューニンクグが滅茶苦茶な人、声がフラットしてしまう人、声がシャープしてしまう人、意味のないカウントを入れる人・・・。ありそうだなぁ。先代林家三平のネタを挟んで、後半はフォークの名曲を曲の出だしと最後だけを繋ぐと意味が変わってしまうというネタ。これって、The Alfee のコンサートでも演っているのだろうか? すごく可笑しい。来月から三ヶ月は、お笑い三人組(笑)のツアーに出るそうだ。

 二重丸◎の太神楽。伝統の太神楽の応用版。傘回しを特大の傘でやってみたり、ジャグリングで新しい笑いを取ってみたり、最後は本水を使った曲芸。水浸しになった舞台を大勢のスタッフが出てきて拭いて回る。

 トリは小宮孝泰『青菜』。七月に[道楽亭]で聴いたときより、マクラを短くカットしてしまったのは惜しいが、これも時間が押していたせいらしい。後半の植木屋さんが扇子を両手でもって扇ぐ仕種がやけに可笑しいのと、小宮流のクスグリが盛り込まれているのが、なんとも楽しかった。

 最後に出演者全員が並び、それぞれり告知をするのは演劇人の習慣。時間が押していて、慌ただしくやって終演。

 年に一度の、この演芸会。来年はどんなゲストが登場するやら。もう400人規模のホールでは収まりきらなくなったりして。

9月20日記

静かなお喋り 9月19日

静かなお喋り

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