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客席放浪記

八犬伝

2013年3月9日
シアター・コクーン

 冒頭、阿部サダヲが「めちゃくちゃじゃねえか!」と叫ぶところから始まる。この「めちゃくちゃじゃねえか!」は劇中、彼の口から何回も発せられる台詞でもあり、この『南総里見八犬伝』の設定を借りた話の主題を象徴するものでもあり、阿部サダヲの持つ、どことないアナーキーさを表した言葉でもあった。

 前半はお決まりの、八剣士が集まってくる過程を描くことに費やされる。この過程をドラマにすると、長くはなってしまうがいつも浮き浮きした気持ちに包まれる。しかし、なんとなく今回の集結は居心地が悪いなと感じた。集まった八人が歌舞伎よろしく見得を切るところは、お定まりかと思っていたが、ここから物語が急展開していく。仲間内で裏切りが起こっていくところで、「おやおや」となる。

 犬とは忠義の象徴。八人が集まったところで大義のために闘うということになるのを、やはり阿部サダヲを信乃にしたことからもいえるように、大義なんてくそくらえという方向に進んで行く。

 私が『忠臣蔵』の話に今一つ乗れないのも、そういったところで、忠義だの大義だのといった事が嫌いだという事かも知れない。

 八人を集めたことに実は裏があったという展開は納得できる。「めちゃくちゃじゃないか!」と怒る阿部サダヲが村雨を振り回して切り込んでいくアナーキーさは、いっそ胸がスッとする思い。阿部サダヲは犬じゃない。どちらかというと猿。およそ孫悟空の動きだ。

 和太鼓の使い方も見事で、迫力のある舞台だった。

3月10日記

静かなお喋り 3月9日

静かなお喋り

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