三遊亭白鳥創作落語集 2012年12月12日 横浜にぎわい座 三遊亭白鳥の挨拶のあとに、すぐ鈴々舎馬桜の高座。白鳥の作った『河童の手』の口演なのだが、マクラというよりは、言い訳のようなものが長いなぁ。アハハハハ。原作どおり演ってほしいとの白鳥の要求に、「これはできない」というギャグを何か所か差し替えたとか、どうしても笑わせる自信が無いところは、「これは原作どおりです」を入れるとかの前ふりで始まった。 この噺は、随分前に一度だけ聴いたことがある。おそらくW・W・ジェイゴズの短編小説『猿の手』をヒントにしたものだと思われるが、とてもよく出来ていた。それで、馬桜の『河童の手』だが、かなり変えているように思えた。なにしろ私が聴いてから時間が経ちすぎているので大分忘れてしまったが、こんな話ではなかった気がするし、ギャグももっと多かったし、第一、終盤の展開が違うような気がする。これだとなんだか消化不良のまま終わってしまうような。最近、白鳥版が活字化されたから読んでみるか。 三遊亭白鳥一席目は『恋するヘビ女』。初演以来少しずつ変化させていきながら、今や定番となった噺。これもまた誰かの手に渡るとまるっきり違うものになるのだろうか? 仲入り後は、だるま食堂のボインボインショウ。新旧取り混ぜてのネタで今夜も絶好調だ。この日のために作った新ネタ『白鳥の女』は例によってダジャレだけど、ソウルコーラスで面白く聴かせてしまう。この人たちのゴスペルソング『魂の歌』なんかは、その音楽が耳について離れないもの。この日初めて聴いたラヴラヴシンフォニーっていう楽器のダジャレソングも面白いし、『A列車で行こう』で聴かせる四文字熟語シャッフルとか、『マンボ・ナンバー5』で聴かせる五十一音マンボとか、いいネタ持ってるんだよね。もちろん〆はサンバでクイズ! さあいよいよ今日のお楽しみは、トリの三遊亭白鳥『冬の船徳 恋の渡し船』、お馴染みの古典落語『船徳』の改作。今年になって何回か演じているものをさらにいじったらしい。こちらの若旦那の徳さんも吉原に通いつめる遊び人。でも彼には心に思う、おタマちゃんという女の子がいる。おタマちゃんにモテたいがために船宿の船頭になろうと修行する。このおタマちゃんというネーミング、きっと多摩川のタマちゃんから持ってきたんじゃないかなぁ。アハハ。白鳥らしい。 この船の漕ぎ方を教えてくれる船頭のさらに師匠がミシシッピーの船乗りミックって、何のことかわからないギャグが入るが、これが最後に繋がる仕込みなんだから油断ができない。鰍沢の激流で訓練を受けた徳さん、いっぱしの船頭になる。そんなとき、おタマちゃんは金貸しのゲンパチに結婚を迫られ、意中の人と駆け落ちの最中。徳さん、ふたりを逃がすために船を出す。こっから先はちょっとしたサスペンスであり、スペクタクル。追いかけてくる大きな屋形船から、徳さんの小さな猪牙船は果たして逃げられるのか! 何年か前の『勘当船』を思い出させるところもあり、こういうサスペンス映画のようなものを落語にしてみせる力をこの人は持ってると思う。 12月13日記 静かなお喋り 12月12日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |