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客席放浪記

ヨチヨチSWAN

2014年11月30日
お江戸日本橋亭

 去年、三遊亭白鳥の弟子になった三遊亭あひるは居なくなってしまったようなのだが、また新しい弟子が入った。その名も三遊亭あおもり。最近落語家になる人はほとんど大学の落研出身者。あおもりは、ほとんど落語を知らないで入門してきたというところに白鳥は惹かれたらしい。なんだかうれしそう。ところが落研落語協会、前座が増えすぎてしまったそうで、寄席に入れるのは一年半待ちだとか。それまではコンビニでバイトしながら見習い修行中。今日はなんとそのあおもりの初高座。出囃子が鳴って高座に座って挨拶するなり、「こっちから見ると、こうなんですね。私もずっと客席側で観てましたから」。これからは客席側で落語を聴くことは無くなるわけだね。初高座の『からぬけ』は初々しい出来。お客さんを笑わせる工夫をしなさいと白鳥に言われていて、与太郎の仕種などに工夫があって、なかなかのものでした。がんばれー!

 三遊亭白鳥が、三遊亭美るくに書き下ろした、『棒鱈』の改作『千葉っと棒鱈』(『女版棒鱈』解題)。これを本人が演るというのが一席目。後輩のみどりちゃんの出身地を埼玉県の浦和に変えて、千葉のローカルあるあるネタに、さらに埼玉ローカルあるあるネタまで投入したバージョン。さすがに菜の花体操は付け焼刃で美るくには敵わないが、噺をグイグイ持って行く手腕は、一段上。女性をやらせても様になってしまうんだから、やはり落語というのは基本的には男のものなんだろう。ただし千葉の金持ちのオバサンは美るくの方が点が高い。これは女の強みだね。

 三遊亭白鳥のもう一席もネタおろし。前からやってみたいと思っていながら先延ばしにしていたネタで、先日交通事故に逢いそうになり、「人間、ある日突然死ぬんだな」と思ったとかで、やってみようと思ったらしい。あるマンガが下敷きだとのことで始まった。女流落語家が増えて男性を圧倒するようになった架空の未来のお話。陰謀渦巻く落語界で、絶大な実力と人気を誇る女流落語家の自作の落語『無限桜』を巡って巻き起こる内幕もの。一方で、頭の中で泉のようにストーリーが湧き出てくる少女がいる。その少女が落語家としてスカウトされ、三遊亭花として入門するという『落語の仮面 三遊亭花入門編』。つまりこれ、『ガラスの仮面』が元になっているわけだ。演劇を落語に置き換えて、一席の落語にしている。しかも、つねづね白鳥が女流の落語について考えていること、そして落語そのものについての白鳥なりの考えや、今の落語界のこと。そういった白鳥流の落語論を展開させいる噺でもある。そしてまた、これが『ガラスの仮面』を元にしているなら、主人公の三遊亭花が、前座、二ツ目、真打と成長して行くシリーズものとしても、どんどん膨らんで行く可能性を秘めている。終ってから「この続きを聴きたいと思いますか?」との白鳥の声に賛同の声が上がったから、これはひょっとする『流れの豚次』なみの長いシリーズになっていくのかもしれない。

12月1日記

静かなお喋り 11月30日

静かなお喋り

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