第14回ヨチヨチSWAN 2015年4月26日 お江戸日本橋亭 開場10分前頃に着いたら、すでに長い列ができている。自由席で定員120名、予約で満員御礼だそうだ。というのも今日の三遊亭白鳥の会は、白鳥がホームページで書いた内容が落語好きの興味を引いたからに違いない。今月12日の『よってたかってもりもり有楽町スペシャル'15春 行くぜ新作、まいるぞ古典』で、当初予定していた演目をキャンセルし、突然話し出した『虹色寄席顛末記』を、もう一度だけ披露すると書いたものだから、あっという間にいっぱいになってしまったようだ。早めに予約を入れておいてよかった。それでも満員御礼だから場内ギッシリの入り。しかしどんなに窮屈でも『虹色寄席顛末記』を聴きたいという熱気のお客さんたちは、ものともしていないようだ。 まずは三遊亭白鳥が出てきて、今日の流れの説明と、近況報告。『落語の仮面』は『ガラスの仮面』の美内すずえの許可を貰って、寄席や落語会で正式に上演できることができるようになったとのこと。ただし、『落語の仮面』というタイトルは、あまりにベタなので変えるように、また美内すずえが、さも推奨しているようなコピーは禁止。そしてチラシなどに美内すずえの絵を使ってもならないという取り決めだそうだ。おお、これで三遊亭花シリーズは、正式に動き出すかも。 白鳥の弟子、三遊亭あおもりは、いよいよ五月下席の浅草演芸ホールから前座として楽屋入りが決まったそうだ。今日はネタおろしの『平林』。前座修業頑張ってね。 あおもりのあとに出てきた白鳥。あおもりの落語のよかったところをちゃんと褒めてあげる。よく自分の弟子の高座のあとに出てきて、弟子をくさす師匠がいるが、あれはあまり好きになれない。白鳥は弟子に優しい。ちゃんとマクラを振ったり、噺も前座のうちから自分なりに変えて演るように指示したようだ。ちゃんとサゲまで変えていたと褒める。こういう対応は気持ちがいい。 一席目は、先日、西城秀樹も一緒の落語会で披露した『普段の正拳』。これはあの三遊亭円朝の『札所の霊験』を時代設定を昭和の終わりに移して作り直した噺。私は一昨年、鈴々舎馬桜の会で聴いている。あのときのタイトルは『敵討札所の霊験・下 みたいなもの』。今回はそれに西城秀樹の歌をからめてくるというアレンジを加えた。基の噺は円朝独特の凄惨極まりないものだが、白鳥はこれにギャグを投入。凄惨な噺なのに笑えるという不思議な世界。この人、推理小説が書けるんじゃないかと思うくらい構成力がある人で、指輪、特殊メイクなどの伏線を鮮やかに使っていると感じたのは前回と同じ。しかし、凶器に干瓢を使うというのは可笑しい。 仲入り後は、体力があればやると宣言していた寄席用の短めの新作ネタおろし。やはり時間が気になるのかサワリだけ。『老人前座』という噺だそうだ。寄席で前座が足りなくなり、人材派遣センターから、昔落研にいたことのある高齢者が前座として寄席に送られてくるというドタバタ。前座として高座に上がるのだが、半分ボケているのが逆に受けて大笑いを取る。これ可笑しいなぁ。いずれキチンと聴ける日が来るだろう。 さて、楽しみにしていた『虹色寄席顛末記』。白鳥自身も、もうこれで封印すると言っているし、具体的な人物、団体も出てくるわけだし、どうしても語る上で、実際にやり取りされた具体的なギャラの金額まで出てくるのだからインターネットには詳しくは書けない。 今月5日に白鳥の地元の新潟で、今年で三回目になる虹色寄席という催しが行われた。これはプロモーターから頼まれて白鳥が出演者との交渉から企画まで関わり、仕切っていた。 そしてその催しの一週間後。東京で『よってたかってもりもり有楽町スペシャル'15春 行くぜ新作、まいるぞ古典』でのこと。トリの白鳥の前に出た立川談笑がマクラで、白鳥が虹色寄席のギャラをギッた(ピンはねした)と語ったことから我慢が出来なくなり、虹色寄席のをめぐるギャラの話、そしてそのウチアゲで起こったことをドキュメンタリーとして語ったのが『虹色寄席顛末記』。まあおそらく事実をそのまま話したのだろうが、そこは白鳥、盛り上げるための、わずかな創作も入っていそう。ちゃんと物語になるように、茹で玉子という伏線を前の方に張っておいて、謎の玉子の殻の登場。そこから虹色寄席に関わったほかの落語家の証言をひとりひとり加えていくことで、実際に何が起こったのかを解き明かしていく。今回は有楽町でやったものに加えてさらに後日談まであるという完全版。ちゃんとサゲまであって、そこにも茹で玉子がうまく使われている。 白鳥が、これでもう封印するというのだから、まさに幻のネタになってしまった。 漏れ聞く白鳥の性格や、ウチアゲの時の危ない人格などを知っていると、より面白い。これはきっといつまでも落語好きの人間たちにも語り継がれる楽屋話として残って行くんだろうなぁ。 4月27日記 静かなお喋り 4月26日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |