ヨチヨチSWAN 2015年8月30日 お江戸日本橋亭 開口一番は、白鳥のお弟子さんの三遊亭あおもり。前座の段階から自分で新作落語を作らせて演らせようというのが白鳥の考えらしい。マクラで改作のアイデアとして『三人の猪木』『オノ・ヨーコ怖い』を披露してみせる。これがアイデアだけなのかと思ったら噺に入っても、これらが伏線として使われていたのには驚いた。 人間の心の中の悲しみを吸い出す掃除機を発明した博士とその助手が、悲しみを持っている人を探し当てる、悲しみレーダーを持って、発明した掃除機の威力を試しに出かける噺。ここでもさらに序盤で張っておいた伏線を回収していく妙は、師匠ゆずりだろう。まだ粗削りの段階だが、ちょっと楽しみな人だ。前座修業頑張ってね。 三遊亭白鳥がシリーズ化を始めた『落語の仮面』。美内すずえの『ガラスの仮面』を落語界に置き換えた、三遊亭花ちゃんの物語。 今日はその第三話のネタおろし。前二話までは前座見習いだった花ちゃんは今回、前座になり、そして二ツ目にまで昇進する。落語界のしきたり、そして新作落語の白鳥が常々感じている古典落語への考えが色濃く盛り込まれている。それがナマの言葉だけでなく、作品に反映されているのと、それだけで終わることなく、一席の噺としての完成度もかなり高い。もちろん伏線の仕込み方が上手いのも驚き。 前座時代は寄席の流れを乱さないように、開口一番で、やたら目立ったことをしてはならなかったのが、二ツ目になると人よりも注目されるようにならなければ仕事が回ってこない。花は『時そば』を改作した『ドキそば』で頭角を現す。これは『トキそば』で売り出した白鳥自身を思わせる。花はさらに名前を上げようとNHK新人演芸コンクール落語部門に応募するのだが、そこには巧妙な罠が仕掛けられていた。 この第三話のタイトルは、『「時そば」危機一髪』だそうで、まさに手に汗握る展開。さすがに白鳥だ。 二席目は『雪国たちきり』なのだが、なんと『雪国たちきり 別ヴァージョン』だそうだ。『雪国たちきり』は、2007年、Yebisu亭で上妻宏光の津軽三味線入りで観て以来になる。今回は、はめものの三味線も入らないようなので、どうするのかと思っていたら、まさか別ヴァージョンで来るとは。『雪国たちきり』は、元になった『たちきり』と基本は変わらなかったのだが、別ヴァージョンは大きくイジった。芸者が若旦那のことを思い続けていたという元の噺から、芸者は若旦那のことを嫌っていたという図式にガラッと変え、この噺をまったく別の角度から見直した噺にしてある。それでも基本となる骨格だけは残してあるのだから見事。白鳥マジックに酔った一席だった。 8月31日記 静かなお喋り 8月30日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |