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客席放浪記

第35回白酒ひとり

2013年9月4日
国立演芸場

 開口一番は柳家さん坊。この会では、前座さんもちゃんとマクラをやるようにと白酒から言われているらしくて、東京の地下鉄の路線記号の話。都営三田線はI。Mは丸ノ内線に使われているから、「私は板橋まで行っているからIで結構です」と卑屈になっているとか、半蔵門線はZ。Hは日比谷線に持って行かれたからといってZはないだろうとか。そのあと、地下鉄車内でのスケッチを入れて笑わせてから『子ほめ』。なんだか、堂々としたマクラと、いかにもな噺のギャップが可笑しいけど、なかなか面白いマクラだった。

 そのあと出てきた桃月庵白酒が、実はさん坊が高座に上がる様子は、柳家喬太郎の出方の形態模写だったことを明かす。そう言われてみると、そんな感じだったよな。さらにさん方さんを呼んで、喬太郎が楽屋入りする様子の形態模写。これは実際に喬太郎と楽屋入りを知らないと解り難いが、さぞやそんな感じだろうというもの。声が小さくて何を言ってるのかよくわからなくて、やたら低姿勢。わかるような気がする。

 一席目は、一般人には解り難い、寄席の割前制度について解説してくれる。それでも実態はなかなかわからないグレーな世界。ただ実際、寄席から貰える割前って、それほど多くは無いんだなということだけはわかる。寄席に出るという事はやはり落語家としての心なんだなぁ。次いで岡場所の近くにあった寄席の説明をしてから、そんな寄席に出ている噺家が、とんでもない女郎に出会う『徳ちゃん』へ。

 とうげつアンサーのコーナーで、お客さんから貰った質問の回答。今回もインターネットには書けないようなことが多いので省略。

 二席目は『錦の袈裟』。与太郎のおかみさんの造形が見事だ。女郎買いにみんなと一緒に行くと言う与太郎を叱りつけ、それでも錦のふんどしが無いと仲間外れにされると聞いて、ガラリと態度が豹変するあたりが江戸っ子のおかみさんらしくていいね。

 仲入りを挟んで三席目は『らくだ』。らくださんのアニぃに当たる人の行動というものは、かなり無茶。らくださんも嫌われものなら、そのアニぃも嫌われ者。それに対する屑屋さんの目線は、白酒本人の茶化し魂に火を点ける。死骸にかんかんのうを躍らせるなんて、かなり酷い行為だもん。「これしか手が無かった」と言うアニぃに「ありますよ」とツッコムあたり、白酒らしさが覗く。

 ここ数年、人気が出てきてチケットも取り難くなっている桃月庵白酒。このなんとも会場内だけで秘密の集会をしているような閉鎖性が面白いんだな。

9月5日記

静かなお喋り 9月4日

静かなお喋り

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